ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんが、6月に出版した『35点男の立ち回り術』読了。
図書館で見付け、手に取り、その日のうちに読了という読みやすさ。
内容は、目次に沿って・・
第1章 いじめられっ子の田村淳がロンブー淳になるまでに考えた立ち回り術
第2章 人の輪を広げるためのネットでの立ち回り術
第3章 ネットで寄せられた質問に答えます
第4章 田村淳のニッポン異論・激論
で、主に印象的であった第1章から。
いじめからの反転攻勢
冒頭、小学校2年生の頃、突然いじめに遭い、いじめられっ子であったという過去。
TVでは、逆のいじめっ子とも言える立場から意外でしたが、この過去が
” 「どうしたら、このくやしい状況は終わるのかな」と・・・。”(p13)
と、これが本書のタイトルにも立ち回り術が編み出されるキッカケとなり、
ホームセンターで材料を仕入れ、ヌンチャクを作ったエピソードが紹介され、
持参した学校で同級生を殴るなどの事態に展開し、親を巻き込むなどの大問題に発展したそうですが・・
” 翌日から、ボクの小学校人生はガラリと変わりました。待遇が一気に改善されたのです。
これまで話さなかったクラスメートが、急にボクに話しかけてくるようになったり、
みんなが明らかに、ボクに一目置くようになりました。”(p16)
という結果を呼び込み、
” 抗ったら人生が変わるんだということを体験しているので、どんどん積極的に仕掛けていこうと思っています。
もちろん失敗するのは恐いですが、やってみなければ何事も分からないですよね。
常に前に出る勇気をくれたきっかけが、このいじめ体験でした。”(p16)
と一転、その後の人生に影を落としてしまいそうな出来事を転機とした生き様が、読者の心を鼓舞してくれます。
さらに、この話にはつづきがあり、
” いじめられている子たちがみんな、ボクのようにヌンチャクを振り回せるわけではないから、彼らに積極的に話しかけて、
楽しく学校生活を送れるように協力してあげようと思いました。
・・中略・・
恐いから、萎縮して誰とも話さない。でも、みんな、話してみると、それぞれ特技があったり、詳しいことがあったりします。
それを、クラス全員に聞こえるように、「おお、こいつ、こんないいとこあるじゃん」と言いふらして、
いじめっ子に対し、いじめられっ子の代わりにアピールしてあげる役を、頼まれてもいないのに買って出たんんです(笑)。”
この事が、クラスの女子たちから
“「田村君って、すごい。そういう長所に気づいてあげられるんだね」” (p17)
といった具合に、評価を上げ始める事になったり、仲間や先生から推される形で
学級委員長、児童会長に立候補し、当選するようになったとの事。
一連の出来事が、
” 人の話をまず聞いてあげる、そうすれば自分の話を聞いてもらえる。”(p19)
という気づきとなり、後の芸能界での
” これは、今もボクがテレビで司会をするときなど、大切にしようと努めている立ち回り術です。” (p19)
という事につながった。
逆境は転機とす
一つの決心をもとに好転した小学校時代から、中学に入れば今度は
” 「田村君、一緒にいて、楽しくないんだもん・・・」。” (p23)
と失恋に遭い、、
” どうせボクなんて、背も高くないし、顔もハンサムじゃない・・・。
そして、トークでも楽しませられなかった・・・。
中学3年生という、あの多感な時期に、厳しい現実を突きつけられ、ボクは一度、どん底に落とされました。
でも同時に、「なにくそ」という反発心も生まれました。
それは、この失恋を経て、「ボクは100点満点になれない」と腹の底から自覚したからです。
ある意味の開き直りです。開き直った人間は強いと思います。”(p24)
そこから、自分自身を35点と評価し、
” 何も持っていない自分だから、うまく立ち回って、上手に生きていくしかない。
自分なりに立ち回り術を見つけて、それを少しずつ自分の体にプロテクターのように着けて、守っていくしない。
そんな風に、足し算の発想で考えられるようになりました。”(p25)
と、ここでも逆境を糧にやがては芸能界を生き抜いていく考え方の土台を身に付けるきっかけとしたとの事。
例えば、それは
” 部活では、自分の技量を磨くよりも、負けた試合の悔しさとか反省点を仲間とどう分かち合うか、に情熱をそそぎました。
人の気持ちを考えて立ち回り、その場を仕切り、物事を進行させる役割が、中学生活の中で、自分に向いていると分かったんだと思います。”(p33)
自分の特性に気づき、
” 世の中には「物事を進行させる役割」が必要なんだな、と知りました。
こうした経験を経て、「人前で仕切って、人のためになりたい」という衝動がどんどん強くなり、今日につながっていったのかなと思います。”(p34)
といった展開に。
立ち回り術を支える哲学
細かい経緯は本を手にとって貰えればと思いますが、本の最後で印象的な件(くだり)があり、それは・・
” ボクのことを、「すごく考えている人間」だと誤解してくれる人がいます。
でも本当はそんなに難しいことは考えていません(笑)。生き残るのに必死なだけです。
ただ、人が自分よりできるからといってその相手を蹴落とそうとしてはいけないと思っています。
人を蹴落とそうとする自分の姿を、他の人たちは必ず見ている。だから「35点男の鉄則」として、立ち回ることはあっても、
人を貶めることだけは、絶対にやってはいけない。
・・中略・・
困難な状況に直面したら、すぐ直接的な行動に出ないで、まず、状況をじっくり「観察」したほうがいいです。
人の話をじっくり聞いてみることです。活路は必ずそこから開けてきます。”(p226)
という哲学。
ともすると競争の厳しい芸能界で生き残るために非情手段を用いたり、
番組での役どころの痛いところ突く感じが、手段を選ばないイメージも、
幼少期の原体験が良いように活かされ、立ち回られているのだなと、イメージが覆されました。
イメージを覆された、アヒルの水かき
テレビを見なくなって久しく、ロンドンブーツの番組はその昔、「スキヤキ!!ロンドンブーツ大作戦」と幾つかを視聴していた程度ながら
時折、Yahoo!ヘッドラインなどで取り上げられるエッジの効いた情報発信の姿勢であったり、
下記映像のような、視聴者を恐れず向き合う覚悟であったり
▪️ロンブー田村淳 ニコ生リスナーにブチギレ
興味を惹かれる生き様で、そのイメージに合う(したたかな)部分もありましたが
ギャップは、あれだけ芸能界で活躍していながら、自分を人並み以下(=35点)と位置づけ、
必死にご自分の生きる場所を模索されている姿勢に大いに先入観を覆され、本を読み終え、また、これからの「立ち回り」にも注目したいと思わせてくれました。
読み手の背中を押し、力づけてくれる一冊と思います。