板倉雄一郎さんの著書『おりこうさん おばかさんのお金の使い方』を読了.-
先日、読了記をアップロードした『社長失格の幸福論』と共に、
9月下旬に受講した「サバイバル投資セミナー」の際に
登壇者である板倉さんに持参してサインを貰うために持参した一冊。この事を契機にもう一度、読み直してみようと。
板倉さんが本書に託した思い
本書が刊行される経緯となったのは、
” 世の中のお金の仕組みは、経済的教養の高い一部の人々によってつくられ、経済的教養の低い人たちのお金が搾取されているということです。”(p1)
という実態に対して、板倉さんが
” この本を通じてお伝えしたいのは、お金の仕組み、そしてインチキを見破るための知識です。”(p2)
という動機から、様々な事例を用いて160ページ弱に渡って、知識の教授が行なわれています。
身近な事例に潜むワナ
事例とは、例えば・・
” ポイントカードのシステムのある店で、ポイントを貯めず、そのときそのとき使い切って商品を買うのと、その店で何度も買い物をしてポイントを貯めてから、あるとき一気にポイントを使って買い物をするのと、どっちが得だと思いますか?”(p12-13)
であったり、
” よく進学塾の広告でみかけますよね、「東大合格○○人!京大合格○○人!」といったキャッチコピー。
でも、こうした合格者数は、実際に何人受験したのか、分数でいうと分母のわからない限り、その価値を見極めるのは難しいのです。”
「当塾から東大合格者百名!」とうたった塾の受講生が毎年百人なら、「東大合格率一〇〇%」。事実上「この塾に入れば、東大に合格できる!」ということになります。
けれども、この塾の東大コース受講生がたとえば毎年一万人だと、この塾の東大合格率は一万人中百人で、わずかに一%にすぎません。なんだ、数うちゃ当たるか、ってことになります。
このように、分数で考えなければならないことはほかにもたくさんあります。とりわけお金の世界では。
その一、企業の業績。はたしてどの程度の資本を投下した結果、得られた利益なのか?
その二、株式投資の実績。どの程度の期間と、どの程度の元手、そして分析や取引に、どの程度の時間を使った結果、得られた利益なのか?
その三、宝くじ売り場の「この売り場から一等○本!」という実績。いったい何枚の宝くじを販売した結果、一等が出ているのか?”(p36-37)
といった誰しも身に覚えのある身近な事例をもとに、そのからくりが解明され、それぞれ経済合理性に基づいた回答が示されています。
「お金」に翻弄されないために
本の後半で、お金に対する根源的な捉え方が紹介されているので、その部分から引用します。
“まず、質問です。あなたの持っている財産はなんですか?
・・中略・・
僕(板倉雄一郎)の場合を申しましょう。ほくは一九九八年に一度経済的にリセットしています。
ぶっちゃけて言うと、自己破産ですね。ただそれから七年、それなりに財産は増えました。
ただ一度、破産経験のある僕にとって、実は財産を「持つ」こと自体がストレスの原因になります。なぜか。
いったん持った財産を減らさないように、失わないように、相当の神経を使う必要があるからです。
それがめんどうくさい。だから車も、何年か前から乗っている中古車だし、家も自分のものではありません。親と同居です。
ただ、僕には、誰にも奪われず、失うことのない財産があります。
なんだと思いますか?
それは自分自身の「知識と経験」です。知識と経験さえあれば、富や幸せを生み出すことができるからです。
・・中略・・
あなたにそのときどきに必要な金をその都度稼げるだけの「知識と経験」すなわち「能力」があれば、そんな心配はいらないわけです。
せいぜい、その能力が錆びる頃(=老後)のために、多少の貯蓄をしておくくらいで十分です。
そう考えると、将来に対する(少なくとも経済的な)不安を打ち消すためには、「たくさんの財産」を持つのが正解ではありません。
むしろ、「いつでも稼げる知識と経験=能力」を持つほうが、より理に適っているというわけです。
ということに気がつくと、ものの見方も変わってくるし、人生の楽しみ方も変わってきます。
短期の「投資情報」を買うよりも、「企業のビジネスモデルの分析能力と価値算定能力」を持つほうが、正しい投資ができる。”
商品の「価格変動」に注目するよりも、その商品の「価値」に注目したほうが、経済的に成功する。
「高価な自動車」を所有するより、車の能力を一〇〇%楽しめる「運転技術」を持つほうが、はるかに楽しいカーライフを満喫できる。
「素敵な異性をカネの力で独り占め」するよりも、「素敵な異性といつでも恋に落ちる力」があったほうが、どんなときでも恋愛を楽しめる。
とまあこうのように、持つべきものはお金ではないのです。誰にも奪われる心配のないあなたの脳みそに備わった「知識や経験」=「能力」なのです。”(p134-136)
経済合理性を学び、それに立ち返る
購入時のもう文字が消えかかったレシートの日付を確認すると、2006年2月。9年振りといったインターバルで本書を再読したことになります。
すっかりその時の記憶はなく・・、そもそも本の存在自体、頭から消えていましたが
先日の「サバイバル投資セミナー」で学んだことの復習にもつながり、それは板倉さんの姿勢が一貫されていること
つまり、本書で説明されているのは、橘玲さんも著書でも繰り返し説かれている
「経済合理性」、この事に尽きます。
誰しも共感しやすい身近な事例から「お金」を切り口に「経済合理性」が説かれた、板倉さんらしい読みやすい一冊です。