” オーストラリア連邦政府のモリソン財務相は9日夜、2017/18年新年度予算案を発表した。
回復基調にある世界経済を背景に、新年度予算案の基本方針を雇用や経済成長の確保を目指すものと説明し、2020/21年度には、74億豪ドルの黒字化を達成すると自負した。
一方、歳出を抑えるために、凍結してきた公的医療保険メディケアの税率を引き上げるほか、利益を拡大させる大手銀行に対しては7月から特別税を課税するなど、ほぼすべての国民に増税負担を強いることで、財政改革を目指す予算案となっている。
モリソン財務相は2回目の発表となる新年度予算案で、アボット前政権から目指してきた財政改善策のうち、130億豪ドル相当について、上院議会の通過が困難だと撤回するとした。
ただ、財政赤字は、本年度の376億豪ドルが、新年度には294億豪ドルに減少し、19/20年度の赤字25億豪ドルを経て、翌年度に黒字になると自信を見せた。
モリソン財務相は、黒字化見通しを支持する材料として、実質国内総生産(GDP)の成長率に言及。連邦政府の予測によれば、新年度に2.75%になった後は3%が継続するという。
また、連邦政府は、失業率について新年度の5.75%を頂点に、それ以降は5.25%にまで減少すると予測。
さらに、これまで低調だった賃金上昇率は、17/18年度~20/21年度に、2.5%から3.75%に上昇するとした。
■中小企業支援とインフラ開発
モリソン財務相は、景気回復の機運をつかまえて経済成長を促すために、中小企業に対する税制優遇のほか、州・準州レベルで事業を阻害している各種規制を簡略化して負担を軽減すると約束した。
さらに、計画中のシドニー第2空港が、長期的に最大で6万人の雇用を創出すると評価し、運営公社に対して今後10年間に53億豪ドルを拠出し、26年の開港を目指して同空港の建設を進めると述べた。
このほか、今後10年間に総額750億豪ドルを拠出して、インフラ開発を推進すると宣言し、各州の道路や鉄道の建設を進めるとした。
■メディケア税を2.5%に
モリソン財務相は一方、水力発電所の拡充や教育環境の改善などに拠出を拡大すると表明。
これに対して国民身体障害者保険制度(NDIS)の財源が足りないとし、これまで引き上げを凍結してきた公的医療保険メディケアの税率を2.0%から2年以内に2.5%へ引き上げると述べた。
■大手銀行に特別税
一方、職場の腐敗や巨額の利益が問題となっている大手銀行に対し、ターンブル政権は厳しい姿勢を示す意図などから、今年7月から0.06%の大手銀行税を上位5行に課税し、今後4年間に62億豪ドルの歳入を見込んでいる。
■外国人労働者税を導入
また、長期就労者ビザ(457ビザ)の廃止と不足技能一時補充(TSS)ビザの導入を踏まえ、一時就労ビザで外国人を雇用する企業に対して、年間で最大1,800豪ドルを課税するとした。
さらに、永住技能ビザを保有する外国人を雇用した企業は、採用時に最大5,000豪ドルの雇用税の納税が必要となる。
このほか、新年度予算案で示されたのは以下の通り:
◆地方の活性化を目指した地域成長基金に4億7,200万豪ドルを拠出
◆海外情報収集に当たるオーストラリア秘密情報局(ASIS)の予算を7,500万豪ドル増額。また、国内情報担当のオーストラリア安全情報機関(ASIO)や連邦警察への予算も拡大
◆国防予算を、20/21年度までにGDP比2%へ引き上げ
◆メルボルン―ブリスベンを結ぶ内陸貨物鉄道開発に100億豪ドル拠出
◆国内大学の学費を7.5%引き上げ
◆2011年に導入した「ゴンスキー教育改革」の見直しで、今後10年間に186億豪ドルを学校の施設や教育環境の改善に拠出
◆老齢年金や障害者年金受給者に対しエネルギー関連費補助として、6月30日までに一時金を拠出
◆初回住宅購入者を対象に、税控除の対象となる住宅購入資金用の積立口座制度を導入 “(出典:NNA.ASIA)