「オーストラリア・ファースト」で就労ビザ発給を厳格化
” オーストラリア政府は18日、外国企業の駐在員らに適用する就労ビザを廃止し、発給条件を厳しくした新たなビザの導入を発表し、即日実施した。
外国人労働者の入国を抑え、国内雇用の確保を狙う。豪州に進出する外資にとって人事コストが増えるなどの影響が広がりそうだ。
「これからはオーストラリア人の雇用が犠牲にならないようにする。豪州の労働者がファースト(優先)だ」。
同日、記者会見したターンブル首相は、トランプ米大統領の自国優先主義に似た「オーストラリア・ファースト」の方針を打ち出した。
ターンブル氏は改正の目的を「可能な限り豪州人が仕事を得られるようにする」と説明。現在の長期就労ビザを即日廃止し、猶予期間を経て来年3月に完全実施するとした。
廃止するのは通称「457」と呼ばれる最長4年間の長期就労ビザ。豪州の子会社などへの企業派遣者や、日本での実績を基に豪州に進出する企業の駐在員らが対象だ。
同ビザに代わり「一時的な技能者不足ビザ(テンポラリー・スキル・ショーテッジ・ビザ)」を新たに設ける。
英語力や職歴などの要件を引き上げ、期間は2年と4年の2種類に変更する。
申請企業には、豪州で人材募集をしたうえで、適切な応募者がいないなど外国人でしか埋められない仕事である旨の証明を義務付ける。
期間2年の新就労ビザでは「IT(情報技術)」など、申請を受け付ける職種を現在の約650から200台に減らすことも決めた。一方、期間4年のビザは「さらに制限する」(ターンブル氏)。
豪政府は国内の賃金水準に見合う給与を得ているかを厳密に調べ、安い労働力の流入を防ぐ構えだ。「これらは非常に重大な変化で、豪州の求職者により多くの就労機会をもたらす」と首相は強調した。
最大の狙いは外国人の入国管理の強化だ。就労ビザは直近で年約9万5,000人に発給され、ここ数年は減少傾向にある。
取得者の国籍の上位3位はインド25%、英国20%、中国6%。日本は1.5%となっている。
記者会見に同席したダットン移民・国境警備相は「現在の就労ビザは永住権申請への道が開かれ、多くのケースで移民の流入につながっている」と指摘。
就労ビザで一定期間滞在した後、永住権を申請することを不可能にすると言明した。就労ビザ発給の見通しについて具体的な数字は明言しなかったが「かなりの制限になる」と述べた。
資源投資ブームの終息後、豪国内の雇用状況は鉄鉱石の産地である西部を筆頭に、大きく悪化している。3月の失業率は5.9%と高止まりが続く。
特にインドや中国からの移民増を巡っては、失業問題に加え、住宅価格高騰の要因となっているとの批判が強い。
ターンブル政権は来年に上院選を控え、内政重視の姿勢を鮮明にしている。豪州は外資誘致を歓迎し、移民受け入れにも積極的だが「移民政策はあくまで国益に基づいて運営する」とターンブル氏は言明した。”(出典:日本経済新聞)
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