新築マンションに4階と14階がないワケ
” 英紙デイリー・メールは、「オーストラリアの新築マンションのエレベーターのボタンから、4と14がこつ然と姿を消した」と伝えた。
記事によると、オーストラリアで建設されるマンションから、4階と14階がなくなっているという。この現象の裏には、オーストラリアの不動産への投資を過熱させる中国人の存在がある。
この2つの数字に含まれる「4」は中国語の「死」と発音が近いため、一部の中国人は縁起の悪い数字だと嫌っている。
つまり、中国人の買い手のためにあえて4階と14階を設けないマンションを建設しているのだ。
記事は、「4階と14階の消失は、中国人のオーストラリア不動産市場の投資が増加していることを証明する例だ」と指摘。
実際、中国最大の海外不動産ウェブサイト・居外網は、2015年に中国の開発業者がオーストラリアの不動産市場に投資した額が50億豪ドル(約4,250億円)に上ると試算しており、中国人が資産を移す先としてオーストラリアの不動産が引き続き注目を集めると見ている。
記事によると、中国国有企業・緑地集団が建設したシドニーの66階建てのビルには「82階」が存在する。これは、4が付く階と40~49階がないためだ。”(出典:livedoor NEWS)
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移住の理想と現実 ⑬
“日本人移住者の多くが、オーストラリアのバランスのとれた生活スタイルや個人主義的労働倫理を享受している一方で、
自営業を営む移住者や日系企業に勤める移住者は、日本並みの多忙な生活を送っている現実が存在する。
さらに、本省の議論の中では、移住者の中にはオーストラリアの職場が「西洋的雰囲気」を消費する場となっている点、
および日本人移住者が言語バリア、ビジネス慣行の相違、人種的差別を経験する点を示し、
理想の人生や自己実現を主な動機として移住した移住者が、移住後の生活で経験する様々な現実的苦悩について述べた。
以上のように本章は、経済的動機井垣の様々な要素によって移住する今日の中間層移住の姿を示し、
彼ら日本人ライフスタイル移住者が移住先のオーストラリアで経験する様々な現実を個人レベルのミクロな視点から論じた。”(『日本社会を「逃れる」オーストラリアへのライフスタイル移住』p193)
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移住の理想と現実 ⑫
” 本章は、様々な理由によって日本社会を逃れた日本人ライフスタイル移住者の移住後の生活について考察し、
定住プロセスや移住後の仕事や余暇について、インタビュー・データをもとに論じた。
本章では第一に、彼ら日本人移住者の居住地選択のプロセスや定住パターンについて論じた。
この点については、移住後しばらくは移住前に抱いていたオーストラリアのライフスタイルのイメージに適合する場を選ぶ傾向を示し、
ライフスタイル価値観と、移住後の居住地選択の関連性について指摘した。
また、その一方で、一定期間後、特に経済力が限定的な若い居住者の間で、仕事や教育に利便性の高い現実的な場所へと移動する傾向が強い点を示し、中間層の移住の理想と現実をめぐるギャップも明らかにした。
第二に、本章は彼ら日本人ライフスタイル移住者の仕事と余暇に関する考察を行い、以下の点を指摘した。
日本社会の中間層に属し、一定の職務経験を有する者が大半を占める日本人移住者は、
移住によって経験する社会階級の下方移動を肯定的に受容し、それによって得られるバランスの取れた生活を享受している傾向が見られる。
無論、経済的・社会的により良い生活を送るための努力は行っているものの、他のアジア系移民やかつての日本人の経済移民の時代と比較すれば、
その温度差は大きく、余暇の傾向として家族との時間や日常に溶け込んだ余暇を楽しむ傾向が見られる。”(『日本社会を「逃れる」オーストラリアへのライフスタイル移住』p192-193)
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移住の理想と現実 ⑪
” 多くの日本人移住者が程度の差はあるものの差別を経験する一方で、彼らの大半は、オーストラリア社会の雰囲気やそこで得られるバランスの取れた生活に肯定的な印象を持っている。
中でも多くのインタビュイーが、差別の経験を語った後に述べたのは、「それがアジア系だからだったかは分からない」、
「オーストラリア社会に限らずどの社会にも外国人への差別はある」、「日本の方が差別はひどい」などの言葉であった。
これらは、日本人移住者がミクロな差別を日常的経験として経験しつつも、オーストラリアで生きていくために、
その差別に対応するためのポジティブな言説を自分の中で構築するプロセスと捉えることができよう。”(『日本社会を「逃れる」オーストラリアへのライフスタイル移住』p192)
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移住の理想と現実 ⑩
” 四十歳代の女性は、これらの公共の場におけるアジア人差別が九○年代中頃に急速に表面化した点を次のように指摘する。
ボーリン・ハンソンが出てきた頃に、差別がひどかったです。全然知らない人にいきなり「Go Home!」って言われたり。失礼ですよね。
あの人が出てきたのは九六年だったんですよね。あの人が出てきて、そういう態度が表面化した気がします。
ずっと心の中に思っている人はボーリン・ハンソンが出てくるまでは態度に出す人は少なかったと思うんです。
一九九〇年代は、オーストラリアの「アジア化」が進行した時代であった(Ang and Stratton 1996)。
第一章で述べたとおり、多文化主義をオーストラリアの労働市場の穴を埋める戦略として位置付けたオーストラリアにとって、
一九九〇年代はアジア系住民の急増を経験することとなり、それを危惧した保守系の政党の代表格がクイーンズランド州を地元とするボーリン・ハンソン率いるワン・ネーション党であった。
彼女は、アジア系移民の流入が白人系住民の仕事を奪うとの議論を行ったものの、実際の支持は限定的なものであった。
しかし、彼女がメディアで繰り返し述べる反アジア系移民の論調は、地元住民の態度を表面化させる契機となり、
結果的に多くのアジア系移民が差別的言動を経験することとなった。”(『日本社会を「逃れる」オーストラリアへのライフスタイル移住』p191-192)
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移住の理想と現実 ⑨
” 差別の場面をミクロな視点で見ると、外見以外にも「英語」が排除的意味合いで使用されている事例が多い。
次のインタビュー・データは、この点を示している。
サニーバンクという中国系の方が多い地区があるんですけど、サニーバンクに買い物にいくときに、チャイニーズの方は家族内ではチャイニーズ(中国語)でしゃべるんです。
それが気に入らないコーケージアン(白人系)の方もいるわけです。そばにいって、「Speak English」なんてわざわざ言うんです。
私は家族でしゃべっているんだからいいんじゃないって思うんですけど、私がそこで何か言って反感を買うのがいやなので、
心の中で怒ってても言えないんです。不愉快ですよね。(四十歳代女性。商社勤務中の海外旅行先で知り合ったオーストラリア人と結婚し移住)
オーストラリアは多文化主義社会が進展し、日常生活に「外国人」が溢れている社会である。
多民族社会化し、人口の二割以上が家族で英語以外の言語を話す社会においては、「われわれ(オーストラリア人)」と「彼ら(文化的他者)」を分ける基準として、「英語」が重要な役割を果たす。
英語を流暢に話す者は、オーストラリアに適応していることを示し、公共の場で大声で英語以外の言語を話す行為は、時に非難の対象となる。”(『日本社会を「逃れる」オーストラリアへのライフスタイル移住』p190-191)
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移住の理想と現実 ⑧
” 以上に述べた言語バリアやビジネスの習慣の相違が、オーストラリアでの仕事や生活において移住者が直面する現実的な問題である一方で、移住者は人種差別という心理的バリアにも直面する。
程度の差はあるものの、ほぼすべてのインタビュイーの間で日常生活において人種差別あるいはそれに近い経験を持っていた。
フリーランスの美容師を営む三十歳代の女性は、彼女が経験した差別意識について次のように語っている。
クイーンズランドって他の州に比べてひどいねー。アジア人嫌いって人多いでしょう。
ブリスベン、特にシティとスプリングヒルの(大手スーパー名)、ひどいねー。私文句言ったもん、「マネージャー出せ」ってね。
アジア人、日本人に対する態度がぜんぜん違う。美容師でサロンで働いてたときも、「こんにちは」って(顧客のもとに)行くと、(自分を)ちらっと見て「別の人にして」って。
まあアジア人だからそうなったとは言えないけど、やっぱりそうだったと思うよ、あれは。
この事例に見られるように、日本人移住者が経験している人種差別の多くは、「アジア系」への蔑視や差別に基づくものである。”(『日本社会を「逃れる」オーストラリアへのライフスタイル移住』p190)
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移住の理想と現実 ⑦
” 現地で食品関連の貿易業を立ち上げ、成功している男性は、このような日常的レベルからビジネス上まで様々なトラブルやストレスを経験した後、
オーストラリアでのビジネスや生活をこなしていく秘訣を語る中で、次のように述べている。
仕事でね、日本から駐在で来ている人にも言うんですけど、すべてに対して期待はしない。うまくいかなかったときに失望しないように、期待しないようにする。
もう一つは、一〇〇パーセント本当のことを言う必要はないんだけど、ウソは言わないようにしようと。
本当のことを言えば、誤解されることもないだろう、と。でもやはり仕事上、どうしても本当じゃない情報を言う人もいるので。
だから何があってもウソじゃない情報、それは大事にしたいと思ってますね。
彼はオーストラリアでのビジネスや生活の経験から、「期待しないこと」と「ウソを言わないこと」の二点を部下に言い聞かせている。
この二点は、様々な些細なトラブルを経験した彼にとって、オーストラリアでのビジネスを乗り切る術となっている。”(『日本社会を「逃れる」オーストラリアへのライフスタイル移住』p189-190)
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「冒険」に出たものだけが、大きな果実を手にすることができる