” こんな空間ならば、ラグビーファンは当然、そうでない人も足を運びたくなる。ラグビーの聖地では熱戦。駅からそのスタジアムまでのストリートは、ワンダーランドだった。
6月11日、『秩父宮みなとラグビーまつり2017』の最終日だった。この日は来日してからの数日間、都内のあちこちでラグビー愛好家や子どもたちと触れ合ってきたワラターズ(スーパーラグビー/豪州)とサントリーサンゴリアスの試合がおこなわれた。
僅差が続いた80分は21-19でワラターズが勝利し、9,848人のファンは互いのアタッキングラグビーに沸いた。そしてゲーム観戦の前後には、スタジアム周辺で「まつり」を楽しんだ。
試合は最初からボールがよく動いた。前半4分、ワラターズはゴール前でパスを受けた203センチ、140キロのLOウィル・スケルトンが力勝負に出ることなく、巧みなつなぎでFLマイケル・ウエルズのトライを演出する。
しかしサントリーも9分にフェーズを重ね、FL西川征克がトライを挙げ、25分にはモールを押し込んで14-7とした。前半終了近くにはWTB中づる隆彰がトライセービングタックルも見せ、そのままのスコアでハーフタイムを迎えた。
後半に入ってPR畠山健介のトライ(後半12分)で19-7と差を広げたサントリーだったが、その後、ノックオンボールを拾われてCTBデイヴィッド・ホーウィッツに(同15分)、ターンオーバー後のアタックからFBブライス・ヘガティーにトライを許す(同20分)。そして残り20分弱、スコアは21-19と水色のジャージーがリードしたままだった。
ワラターズのダリル・ギブソン監督は「チームとしての戦略パターンをしっかり持っていることが印象に残った」とサンゴリアスのスタイルを評価した。
逆転負けを喫した沢木敬介監督は「普通に戦ったら負ける相手なのでサントリーらしい、はやいテンポで戦おうと話しました。ただ、もう少しいけるかな、と思っていたセットプレーでプレッシャーを受けた。
対応はできているところもあったが、コントロールできず、アンダープレッシャーの状況でのプレーに課題が残ったのでそこを改善していきたい」と話した。
互いに攻め合った80分に、スタジアムでは大きな歓声が何度もあがった。しかし、この日曜日の外苑前が賑やかだったのは、その時間帯だけではなかった。
東京メトロの外苑前駅から秩父宮ラグビー場に続くスタジアム通りを午前中から夕方まで1車線のみを残して封鎖。そこには港区内にある大会サポート企業や各国大使館、
2019年ラグビー ワールドカップ開催各地のブースがズラリと設置され、それぞれが趣向を凝らしたサービスや飲食物を用意し、集まった人々を楽しませた。
ストリートを歩けば、港区にある企業や支える人たちの存在を知り、2019年のワールドカップの開催地がどこなのか分かり、それぞれの熱を感じられた。
特設ステージにアイドルたちが立つ時間帯もあり、これまで楕円球に興味のなかった人たちが日本ラグビーの聖地のすぐそばまでやって来た。
地域と行政、ラグビー界とその外の人たちが手をつないで実現した今回のイベントは、2019年のラグビー ワールドカップ、
2020年の東京オリンピックと連続してビッグイベントを迎える日本、東京にとって、スポーツを地域振興につなげるためのモデルケースになればいいと、企画、実行されたものだった。
この日の賑わいを見れば、その目的は果たされたと言っていいだろう。2年後、3年後、こんな光景が日本や東京のあちこちで見られるのなら、多くの人々がその時を待ち遠しく思う。
それでも、準備段階からきょうまでの長い日々の中で、ノウハウや改善点、教訓を多くの人が知ったはずだ。それらをこの先の世界的イベントの実行者、支える人たちに伝えることが求められる。
垣根をこえて世の中の多くの人がスクラムを組み、パスをつないだら、これだけの大きなことができた。逆にそうしない限り、夢は実現できなかった。
それをあらためて知ったことが、『秩父宮みなとラグビーまつり2017』が残すレガシーの一部となるだろう。”(出典:RUGBY REPUBLIC)