移住の理想と現実 ⑥
” 日常生活における文化的衝突の事例として、五十歳代の女性は次のように自身の経験を話している。
(店で)「これ、三十分前に買ったんですけど、壊れてるじゃない」って言うと、「私が売ったわけじゃないのよ!」って言う。自分で責任を引き受けない。
「でもあなた(大手デパート名)の人でしょ。あなた(大手デパート名)が働いているっていうのは、あなたは(大手デパート名)のrepresentativeだから受けてたたなきゃ」って言ったらびっくりしてました。
それを(オーストラリア人の)主人に言ったらみんなそうだって、警察に行っても責任逃れ、自分で責任を引き受けない。
外資系航空業界に勤め、従業員のトレーニングを行っていた彼女にとって、オーストラリア人の「責任逃れ」の傾向は、日常生活の様々な場面で目についた。
彼女自身の電化製品の返品をめぐるトラブルに見られるように、異文化に育ったがゆえに体験する日常的な些細な衝突は、移住者の立場の個人にとって時にストレスとなる。
これらの経験や感情は、日本人移住者の多くによって経験されるものであり、ビジネスの場面のトラブルにもたびたび繋がる。”(『日本社会を「逃れる」オーストラリアへのライフスタイル移住』p189)
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今週、Club Australia のミーティングに参加していた際、(5月28-29日)南三陸町を訪れるイベントの案内があり、
その場で今一度「東日本大震災から5年になるのか」と。
イベントはClub Australia、在日オーストラリア大使館、在日オーストラリア・ニュージーランド商工会議所がチームを結成し、
南三陸町の行政とタイアップして開催されるもので、ご関心をお持ちの方には概要をお伝えします。
オーストラリア大使館では3月11日に合わせた行事への参加もあり、オーストラリアから現地へ乗り込まれる方もいらっしゃるとのことで、国境を越えた支援の実態に、改めて当時の被害の大きさを思い知らされることにもなりました。
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移住の理想と現実 ⑤
” 日本で看護師として勤務し、現在はパートタイムで事務系の補助的な仕事を行う女性は、次のように述べている。
日本に比べて、(オーストラリアの職場のやり方は)細かいのかなって思ってたんですが、いろいろ資料の整理とかむちゃくちゃだったりして、
これは整理しておけば後から楽なのになあって私は思うんですけど、でもぐちゃぐちゃだったりして。おおざっぱだなあって。
彼女は引き継がれた仕事を行う中で、前任担当者が杜撰な書類整理をしていた点についてこのように話した。
彼女にとって日本での事務処理は患者の個人情報の管理を意味していたため、合理的かつ的確な仕事を要求されていた。
そのため彼女は、前任者の不備を補正することに作業時間を奪われ、最初の数週間はその作業にストレスを感じることとなった。
同様に、日本でフルタイムでのOLと派遣社員を経験し、現在はパートタイムでリサーチ関連の業務を行う三十歳代の女性は、次のように述べている。
ちょっと信じられないと思ったんだけど、給料の支払い、ここって間違い多いんだよね。
一回とか二回とかじゃなくて、もう何回も。だから(従業員は)みんな毎回ちゃんと(給与明細を)もらったらすぐに見るんだよね。
こんなのって日本じゃ考えられない。たぶんオージーにはダブルチェックっていう概念がないんだと思う。
このように「オーストラリア人の気質」や「仕事のおおざっぱさ」といった言葉で表現される文化的相違は、
日本人移住者が働く上で、日常的な些細なトラブルを頻発させ、それはストレスの元となる。
移住者にとって小さなストレスは、地元住民よりも大きなストレスとなり、時に日常生活において文化的衝突を発生させる。”(『日本社会を「逃れる」オーストラリアへのライフスタイル移住』p188-189)
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移住の理想と現実 ④
” オーストラリアで日本人移住者が働く上での障壁は、言語バリアのみならず、日本とのビジネスの慣習の相違も一定の制約となりえる。
厳格な労働観を要求される日本の企業社会を経験した日本人移住者にとっては、オーストラリアの時間を厳守しない風潮や突然のキャンセルが頻発する傾向などに見られる「緩い労働倫理」は、一種のカルチャー・ショックであり、
移住者の適応過程においてオーストラリア社会への不満を感じさせる要素となっている。”(『日本社会を「逃れる」オーストラリアへのライフスタイル移住』p187-188)
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移住の理想と現実 ③
” 日本で、貿易関連企業に勤務した後、ヨーロッパ系の男性と結婚し、オーストラリアに夫婦で移住した女性は、次のように話している。
こっちに来て二年目に、オーストラリアの政府のヘルス・インシュアランス・コミッションの募集がありました。
運良く受かりまして、今でいう、メディケアですね。メディケアと、メディバンクがあって(中略)母国語でないから、やはり英語が一番苦労しましたね。
いっしょに仕事をしている人は英語を話せて当たり前っていうふうになっているのでそれが大変だったし。
毎日が英語のレッスンでした。仕事の中で親日派の方がいらっしゃって、その人たちに教えていただいて助かりました。”
これらのインタビュー・データは、一定の語学力を有している移住者でもオーストラリアの職場においては、第二言語として英語を使う以上、言語バリアを経験している点を示している。
滞在年月が経つにつれて、これらの言語バリアは克服されるものの、先に示したインタビュー・データは、移住者が経験する現実の一端を示していると言えよう。”(『日本社会を「逃れる」オーストラリアへのライフスタイル移住』p187)
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移住の理想と現実 ②
” オーストラリアの永住権取得には一定の語学力が必要とされているため、大半の日本人移住者は英語を日常レベルで使用する運用能力を有している。
しかし、フィールドワークをとおして、彼らの多くが特に移住直後の時期に言語バリアに苦悩した経験があることが分かった。
現在、日本市場向けのコールセンター勤務する三十歳代の女性は、英語をめぐる苦労について次のように語っている。
(仕事をしていて大変なことは)やっぱりコミュニケーションですね。お客さんとも会社の同僚とも大切だし、難しいなあと。
難しい点は、(日本語での)苦情の対応ですけど、やっぱり職場内の上司とかとの(英語での)コミュニケーションの方が大変かな。
同様に、旅行・留学関連の会社に勤務する男性は、同僚との英語でのコミュニケーションについて次のように語っている。
僕は英語を(日本で)ちゃんと勉強したことがなかったし、自分の人生の設計のなかに海外に住むなんて最初は考えてもなかったので、まずは英語に慣れるのには苦労しました。
ブリスベンに数年住んでだいぶ慣れてきたんですけれども、オーストラリア人のスタッフとのコミュニケーションは・・・まだまだ、苦労してばかりで・・・。”(『日本社会を「逃れる」オーストラリアへのライフスタイル移住』p186-187)
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移住の理想と現実 ①
” オーストラリアの職場で働く日本人移住者の多くが、オーストラリアの職場環境や勤務形態およびワーク・ライフ・バランスに肯定的な印象を持っている一方で、
「移住者」あるいは「外国人」である立場は、日常生活やビジネスの場面で様々な苦悩をもたらす。
ウッドゥン(Wooden et al. 1994)らが指摘するように、オーストラリアに移住する移民一世は、一般的に定住過程において文化的および現実的側面において様々な問題を経験する。
この傾向は、筆者のフィールドワークにおける参与観察や聞取り調査でも観察され、日本人移住者は様々な困難を経験していたが、
その中でも言語バリア、ビジネス慣習の相違、人種差別の三点は、移住者の多くが経験する主要な要素であった。”(『日本社会を「逃れる」オーストラリアへのライフスタイル移住』p186)
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オーストラリアの著名人 ⑫ :ジョージ・ミラー
先日、アカデミー賞で今回最多の6冠に輝いた『マッドマックス 怒りのデスロード』について取り上げましたが、
トム・ハーディー ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント 2015-10-21
その立役者であるジョージ・ミラー監督がオーストラリアに凱旋帰国した時の模様が記事になっていたので、紹介します。
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「冒険」に出たものだけが、大きな果実を手にすることができる