日本と安全保障急接近の背景
” 観光や留学といった分野での関心が高かったオーストラリアが今、安全保障の世界で日本と急接近している。
3月12日には、両国と米、インドを加えた4カ国安保対話(QUAD)首脳会談も実現した。
日本政府内にも今や「豪州は米国に次いで、我が国の安全保障に欠かせない国だ」という声さえ漏れる。
なぜ、日本と豪州は急接近したのか。最近までオーストラリア大使を務めた高橋礼一郎氏の証言などをもとに検証した。
昨年11月17日夜、都内の帝国ホテル。少し前に菅義偉首相との首脳会談を終えたばかりのスコット・モリソン豪首相は上機嫌だった。
あいさつに訪れた高橋礼一郎駐豪州大使(当時)を見ると破顔一笑でこう語った。「100%ハッピーだ」 会談では、両国の「円滑化協定」について大筋合意していた。
自衛隊と豪州軍が共同訓練を行う際に、相互訪問を円滑にするという内容だ。
日豪両政府は2018年1月の首脳会談で、円滑化協定の早期妥結を確認し、交渉を続けていた。
ただ、死刑を廃止した豪州側から、日本で罪を犯した豪軍関係者に死刑が適用されることへの懸念が出て、交渉が進んでいなかった。
モリソン首相の訪日は従来、20年1月を予定していたが、円滑化協定は「重要な進展があった」という表現で合意するはずだった。
交渉は進んでいるが、合意できていない項目もあるという意味だった。
だが、19年秋から豪州で起きた大規模な山火事への対応に追われ、20年1月の訪日は同年6月に延期された。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大で訪日は再び、11月に延期されることになった。
20年9月ごろ、高橋氏は豪州の首都、キャンベラで、モリソン首相の補佐官に呼び出された。
補佐官は「訪日の際、円滑化協定に署名したい」という首相の考えを伝えた。訪日まで2カ月という時点で、協定の細かな内容まで詰めることは不可能だった。
日本側の考えを聞いたモリソン首相は署名を諦めたものの、「大筋合意」にこだわった。そのためには、死刑制度の適用を巡る問題を解決しなければならない。
モリソン首相は間もなく、国防省担当官らを日本に派遣した。日本の外務、法務、警察などと約2週間にわたった協議の末、豪州側が歩み寄る形で死刑制度の適用を巡る問題は決着した。”(出典:GLOBE+ via Yahoo! JAPAN)