オーストラリアドル急落、10年ぶりの安値
“オーストラリアドル(豪ドル)が年始、対ドルで急落し一時1豪ドル=0.67ドル台と、2009年3月以来約10年ぶりの安値を付けた。
豪経済が資源輸出で中国依存を強めた結果、豪ドルは中国景気への市場の懸念を正面からかぶる形で推移、18年は約10%下落した。
豪州は世界最長の景気拡大を記録するが、中国頼みというアキレスけんを抱え豪ドルの一層の下げを予想する声も出る。
豪ドルは3日午前、米アップルが中国での販売低迷を理由に業績予想を下方修正したことを受け急落。
直後に持ち直し、貿易戦争を巡る米中協議進展への期待から7日は1豪ドル=0.71ドル台まで戻した。
ただ、英調査会社キャピタル・エコノミクスのマーセル・ティエリアント氏は「現在1トン約73ドルの鉄鉱石価格が60ドルまで下がり、世界の株式相場が下落すれば、1豪ドル=0.65ドル台まで落ちることもありうる」とみる。
中国は2000年代から、鉄鉱石や石炭などへの需要で資源ブームをけん引し、豪経済の成長を下支えしてきた。
2000年に1453億豪ドル(約11兆2千億円)だった豪州のモノとサービスの輸出は17年には3,866億豪ドルまで拡大。
中国への輸出は68億豪ドルから1159億豪ドルと17倍に跳ね上がり、今や輸出の3割が中国向けだ。
金融危機後の08年10~12月期、マイナス成長に転落した豪経済の回復を手助けしたのも中国の資源需要だ。
資源価格の上昇に支えられ経済が好転、豪準備銀行(RBA、中央銀行)は09年10月に先進国で先陣を切って利上げを決定している。
11年から資源ブームがピークとなった13年初めまでは1豪ドル=1ドルの等価(パリティ)超えが定着した。
だが、こうした豪ドル高は工業製品の輸出競争力をそぎ、高止まりする人件費と共に製造業の衰退を招いた。
17年にはトヨタ自動車などが豪州での自動車生産を終了。豪国内で完成車を生産するメーカーは姿を消した。
今では製造業が国内総生産(GDP)に占める割合は6%程度だ。
豪州は景気後退の一般的な定義である「2四半期連続のマイナス成長」を経験していない期間が18年7~9月期で109四半期連続となり、景気拡大の世界最長記録を更新している。
13年をピークに資源ブームは終息したが、移民による人口増や住宅建設ブームで経済は堅調に推移してきた。
ただ、鉄鉱石などの資源価格は中国景気の影響を色濃く受ける。米中貿易戦争が長期化すれば、世界の粗鋼生産量の5割を占める中国景気も下振れし、資源価格への影響は必至だ。”(出典:日本経済新聞)