1989年4月出版ながら2021年において再び脚光を浴びているとの
筒井康隆先生の『残像に口紅を』を読了。
話題のもとは・・
本書冒頭で、主人公の作家のもとへ懇意にしている評論家から
” もしひとつの言語が消滅した時、惜しまれるのは言語かイメージか。つまりは言語そのものがこの世界から少しずつ消えていくというテーマの虚構。
・・中略・・
ひとつのことばが失われた時、そのことばがいかに大切なものだったかが始めてわかる。
そして当然のことだが、ことばが失われた時にはそのことばが示していたものも世界から消える。そこではじめて、それが君にとっていかに大切なものだったかということが」”(p18)
との提案を受け、本書の一章進むごとに五十音が一つずつ消えていくという実験的SF小説。
(次第に文字が失われていくとの)コンセプトは聞いたことあったものの
最初はともかく中、後半に至って消えた文字数が多い中でも小説が整理しているのは圧巻。
続きを読む 筒井康隆先生が試みた次第にことばが失われていく世界:『残像に口紅を』読了 →
小説推理新人賞作家 上田未来さんのデビュー作『人類最初の殺人』を読了。
サイン本販売でフラグが立ち
そのインパクトあるネーミングに装丁等から好奇心刺激され、購入に至っていた経緯。
重たいテーマを軽やかに
本書には
人類最初の殺人
人類最初の詐欺
人類最初の盗聴
人類最初の誘拐
人類最初の密室殺人
の六話を収録。
例えば、タイトルにもなった「人類最初の殺人」では
続きを読む 上田未来さんが綴った6つの人類最初の犯罪史:『人類最初の殺人』読了 →
筒井康隆先生のショートショート集『あるいは酒でいっぱいの海』を読了。
2021年8月の再発に合わせ、
サイン本が発売されたチャンスを捉え入手していた作品。
「一体全体、筒井康隆先生のタイトルって何冊?」と2021年に入っても新刊に、再発に次から次に・・ との印象ですが、
昭和に出版されたショートショート集に限れば、巻末の日下三蔵さんの「解説」によると、本作を含め『にぎやかな未来』『笑うな』『くたばれPTA』の四作品にとどまるそうな。
本作に関して、筒井康隆先生ご自身は昭和五十二年十月に書かれた「あとがき半分・解説半分」で
続きを読む 筒井康隆先生が、まだ駆け出しの頃に綴った三十の短編:『あるいは酒でいっぱいの海』読了 →
先週、中間記を ↓
アップロードした作家 川上未映子さんの『夏物語』を先月(2021年10月)末読了。
中間記を書いている頃には、描かれている話しの筋に凄みを掴めていませんでしが、
続きを読む 川上未映子さんが示した生命の意味をめぐる真摯な問い:『夏物語』読了 →
川上未映子さんの『夏物語』を読み始めて
第一部 二〇〇八年 夏
1 あなた、貧乏人?
2 よりよい美しさを求めて
3 おっぱいは誰のもの
4 中華料理店にやってくる人々
5 夜の姉妹のながいおしゃべり
6 世界でいちばん安全な場所
7 すべての慣れ親しんだものたちに
第二部 二〇一六年 夏〜二〇一九年 夏
8 きみには野心が足りない
9 小さな花を寄せあって
10 つぎの選択肢から正しいものを選べ
11 頭のなかで友だちに会ったから、今日は幸せ
12 楽しいクリスマス
13 複雑な命令
14 勇気をだして
15 生まれること、生まれないこと
16 夏の扉
17 忘れるよりも
と、章立てされているところ「第二部 12 楽しいクリスマス」まで読み終えたので、そこまでのおさらい。
生々しさから根源的な問いへ?!
目次を書き出すだけでもサラッといける量ではないですが、ページ数にすると実に652ページ(!)
購入したきっかけがサイン本且つアメリカでも評判を得ていることによるもの。
その安易さとは裏腹に、いざ読み始めると・・ 内容を含め相応の覚悟を求められる長編で、頭に全体像を上手く描けていませんが、
裏表紙に
続きを読む 川上未映子さんが示した生命の意味をめぐる真摯な問い:『夏物語』中間記 →
作家 有川ひろさんの『みとりねこ』を読了。
Twitterで見つけたサイン本販売情報から帯に踊る
「稀代のストーリテラーが綴る7編、7匹の物語」
なるコピーに好奇心を刺激され、
真夏の夜、閉店間際の書店に駆け込んで入手していた一冊。
七様の猫の物語
本書は、
ハチジカン 〜旅猫リポート外伝〜
こぼれたび 〜旅猫リポート外伝〜
猫の島
トムめ
シュレーディンガーの猫
粉飾決算
みとりねこ
の七話で構成。
それぞれ異なる猫と飼い主らが織りなすストーリーで、一話目の「ハチジカン 〜旅猫リポート外伝〜 」は、
続きを読む 有川ひろさんが綴った猫と人が心を通わす七つの物語:『みとりねこ』読了 →
小説家 万城目学さんの『バベル九朔』を読了。
(2021年)6月、西荻窪の今野書店で開催されていた万城目学さんの『ヒトコブラクダ層ぜっと』刊行記念フェアで
購入していた
2冊のうちの1冊。
夜明け前の時期を過ごした・・
舞台は、
” 大学卒業後に勤めたハウスメーカーの事務職を三年で辞め、俺は単身この街にやってきた。おばが退去し、空き部屋になったばかりの五階に社員寮から荷物を移し、バベルの管理人となることを一方的に宣言した。”(p20)
という
先月(2021年9月)読んだ『べらぼうくん』にある万城目学さんの人生の転機を迎えた雑居ビルに着想を得たであろう作品。
拡がるスケール
当初は、管理人とテナント間の交流、人間模様といった次元が、
続きを読む 万城目学さんが管理人を担った雑居ビルで膨らませた妄想の果て:『バベル九朔』読了 →
作家 伊東潤さんが、終戦直後の沖縄を描いた『琉球警察』を読了。
三度、(伊東潤さんの)サイン本入手機会を得て
手元に引き寄せていた著書。
戦後沖縄の精神的支柱
本書は、戦後、米軍の管理下に置かれた沖縄で、奄美諸島出身で琉球警察に採用された主人公(東貞吉)が、
続きを読む 伊東潤さんが描いた戦後沖縄の瀬長亀次郎さんと志を支えた男たち:『琉球警察』読了 →
「冒険」に出たものだけが、大きな果実を手にすることができる