WBC オーストラリア代表を支えた日本人打撃投手
” オーストラリア代表のウエアを着てグラウンドに立つ日本人がいる。打撃投手を務める長山光治さん(60)=メルボルン在住=は、WBCに出場するチームに帯同して来日した。
真剣なまなざしで右腕を振る。2011年、オーストラリア国内プロリーグのメルボルン・エイシズで当時監督を務めていたフィル・デイル氏から打診を受け、打撃投手になった。
同チームは西武の菊池雄星投手などがウインター・リーグで派遣されたことで知られている。
そこで16年4月に監督に就任したのが、オーストラリア代表監督のジョン・ディーブル氏だった。
「こんな経験をすることもないので。名誉あること」と指揮官に志願して“代表入り”を果たした。
野球少年だった。「小さい頃に父からグローブを買ってもらって」大学までプレーした。
オフ期間は4段階のレベルに分かれる現地のチームに所属。「ユーティリティープレーヤーです」と“本職”の投手だけでなく、捕手、内外野も守る。
埼玉の大学で助手をしていた長山さんは一時期、オーストラリアの大学で客員教授をしていた。
その時に出会った日本人女性と、1994年に結婚。一度日本に帰国したが、98年に永住権を取得し、一家そろって移住。メルボルンの日本語学校で校長を務めた過去を持つ。
こだわりがある。「打撃投手も真剣勝負。打者が打ちにくそうなところにあえて投げる」。
その意図は選手を育てるためにある。「いい打球が飛ぶかを本人に気付かせるように」。教員経験と、親心が顔をのぞかせた。
「私なんて裏方ですから」。来日にかかった移動費、宿泊費は全て自費で賄った。
「妻には頭が上がらない」と苦笑したが、日本人のボランティア精神を大舞台でも発揮。選手とじゃれ合う姿はまさにチームメートも同然だ。
チームは1勝2敗でB組1次リーグ敗退。最後はキューバとの一騎打ちで相手を上回る13安打を放ったが、3-4の惜敗だった。
ディーブル監督は「彼(長山さん)はチームにとって大事な存在」と語り球場を後にした。
長山さんは「代表の一員として参加できて、夢のような瞬間でした。眠れないぐらい興奮しました。
野球は私にとって生きがいです」。4年後へ-60歳右腕の冒険はまだまだ続く。(出典:デイリースポーツ)