“Archieve”に象徴されるオーストラリアに根付くスポーツ文化
” 私が世界中で好きな街の1つであるのがシドニーだ。先日もシドニーを訪問してきた。
幼少期からなじみのある地域で、シドニーの環境に対してあまり疑問を持たなかったが、競泳の現役を引退してスポーツを「する」から「見る」「支える」という立場になって気がつくことが多い。
たとえば、オーストラリアの国としての歴史は200年余と短いが、スポーツ文化の視点からは学ぶべきことが多い。
スポーツは、競技力向上だけが目的ではない。トップで活躍するアスリートも、健康維持のためにウオーキングやジョギングをしている。それも全てスポーツだ。
シドニーの朝は早い。海辺では、ランニングしている市民たちが目立つ。犬の散歩をしている人も多くいる。空き地でキックボクシングのエクササイズをしている人や、ヨガやピラティス、海で泳いでいる人もいる。
年齢はさまざま。エクササイズをしているのも、全く違和感もないし、通りすぎる人たちに「Good Morning!」目と目を合わせてあいさつする。
あいさつの文化も日本と少し異なるように思う。目と目を合わせることにより、人との距離を縮めることが容易にできるとも感じる。
一方で、朝早くから家族で朝食をカフェで食べるという朝食文化も、日本人には新鮮ではないだろうか。
とても早い時間(午前7時より前)からカフェは開いていて、ウイークエンドは、多くのお店で客が外まで並んでいる。昼に向かって徐々に客が減っていくというのもなかなか面白い。
果たして、ずっと住んでいる人はどうだろうか。スポーツや文化の違いについてどう感じているのだろうか。
元々ラグビーを通して知り合いになった日本人で、オーストラリアに移住した高橋靖久さん(48)にお話を伺った。2002年に「ラグビーを楽しむために」夫婦で15年前に移住した。
高橋さんは、元々、関東学院大学でラグビー部に所属し、社会人では明治生命(現明治安田生命)でもFBでプレーしたラガーマンだ。
日本にいる際には、結果を残すことレギュラーをとることだけに執着し、ラグビーを楽しめなかったという。
組織的な背景を話すと、日本の場合ラグビーを大学でやろうと思うと、当然ながら大学に入学しなければそのチームに所属できない。
しかし、高橋さんはオーストラリアに渡り、地域リーグの名門シドニーユニに所属した。
当時は、ディビジョン1から5まで存在していて、最初はディビジョン5に入った。現在は、ディビジョン4までになっている。ディビジョンとは、1軍から5軍という意味だ。
日本は、レギュラーで出場して評価される傾向がある。しかし、高橋さんはシドニーにきて、シドニーユニに所属。
最初は5軍に所属したが、誰も5軍だからという悲壮感はなく、5軍には5軍のプライドがあると感じたという。
もちろんラグビーで上にいきたいけれど、自分の場所にプライドを持ってプレーしている。
結果はもちろん大切だろう。結果を出すということは勝つということ。つまり、勝つということは、負ける人もいるということだ。
この自分を誇りに思うことや、だれも1人では勝者になれないことを、高橋さんの言葉から感じることができる。そのことを前提にラグビーに向き合っている。そんな姿勢だ。
結果がすべての世界だからこそ、「楽しむ」という境地に行くのではないか。
ディビジョン1の選手が、ディビジョン5や4の試合を応援にくることも多くあるようだ。
スポーツの根底にある、“Achieve”(成し遂げる)することが根付いているオーストラリアだからこそのスタイルだ。
自分を誇りに思えるからこそ、結果を出すアスリートの価値がわかるし、たたえられる。
町で朝からランニングする市民の人たちも、自分の目標に向かって「人生を楽しんでいる」に違いない。”(出典:日刊スポーツ)
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