五木寛之さんの『作家のおしごと』刊行記念トークイベントに参加。
足を運んだのは五木寛之さんの著書はその昔、1冊読んだ程度ながらその存在感と講演タイトルにある作家の日常的なことに興味を持ってのことから。
五木寛之さんの著書のタイトルに「70代」「老」といった言葉が見られるように、これまで自分が参加してきたイベントの中で年齢層が高めに感じられる中、
イベント中に分かったことですが、盛岡、前橋、高崎といった遠方からのいらした方々もいて、引き寄せる力というのか、やはりその存在感を感じた次第。
作家と読者、今と昔
これまでナゴヤドームを含め様々な講演にイベントをされてきたそうで、サイン会を例にするとかつて参加者の立場でサインされるだけではどこか寂しを覚えたことから
自分がする側になった時、為書きを書いていたら(時間を要し)時間切れとなってしまい、
当初、打ち切りの判断も、参加者に詰め寄られ、会場の閉店時間を延ばす形で対応したものの
後に「作家がそこまでするのか」とマスコミから叩かれたそうな。イベント全盛の今では考えられないことですが、
五木寛之さんのお考えでは、今と昔では作家と読者の立場が逆転して
作品を読む際、かつては同人誌でも細かな点まで描写することが当然であったものの
今は読者が上から目線で自分の世界に合わせて(余白を持たせて)塗り絵を塗っていくがごとく、読むようになっていると。
事前告知に絡んだ部分では、昔の作家は三島由紀夫さんを例に作詞、作曲、歌手、ボディビル、ヌードモデル 等々、当たり前に何でもしていたと、
会場ではトークを中断して、三島由紀夫さんに石原慎太郎(ペギー葉山さん)の歌が披露され、新たな一面を知らしめられました。
他で印象に残ったところでは、日刊ゲンダイに1万回以上連載が継続中でギネス認定もされた『流されゆく日々』の裏話しに、
齢八十五を過ぎたとのことでしたが、歌詞に文書などが、すらすらと淀みなく語られる正確さに
平成について、(平成が)終わるという感覚よりも、昭和が遠のいていく気がされていると、
五木寛之さんご自身はその想いに、昭和歌謡の作曲を手がけられているそうで、実際、ミッツマングローブさんに提供した詞(曲/かえしてYOKOHAMA)が会場で流される場面もありました。
そしてトークの最後、著作であれ、建築物であれ、街並みであれ、書き上げられた/完成した当時に思いを馳せ、想像力を働かせることが重要だと仰れたことが印象に留められました。
作家の枠にとどまらぬ五木寛之さんの世界
かつて論学会とトークと音楽を組み合わせたイベントを日本全国で開催され、
昨今のミュージシャン事情から近年は開催しづらくなってしまったものの
新たな形態を模索されており、今回は五木寛之遊談会との仮題から実験的な試みであったようですが、
生原稿にCDに随所でプレゼントが問題の正解者に配布されるなどサービス精神旺盛で、
読者の方々の拠り所、コミュニティの中心を担われてきた方なんだぁ、と
これまでと趣の異なったイベントに五木寛之さんのお人柄を感じることが出来ました。