精神疾患の経済コスト、1日約375億円
” オーストラリアでは毎年、不安神経症やうつ病、パーソナリティー障害などを含む精神疾患を患う100万人が適切な治療を受けておらず、
精神疾患が経済に及ぼすコストは1日当たり約5億豪ドル(約375億円)、年間にして1,800億豪ドルに上っていることが、生産性委員会が作成した報告書の草案で明らかになった。
同委員会はこの中で25項目の提言を行っており、精神疾患を抱える人々への対応強化として、職場や教育、住宅分野などで抜本的な改革が必要と訴えた。10月31日付地元各紙が報じた。
生産性委員会によれば、精神疾患や自殺がオーストラリア経済に与えるコストは年間430億~510億豪ドルに上り、
これに加え、患者の健康悪化や寿命の低下などによる影響が年間1,300億豪ドルに達しているとの見解を示した。
内訳としては、医療サポート・サービスで年間180億豪ドル、患者の経済参加の低下と生産性の喪失によるコストが100億~180億豪ドル、友人や家族による看病・サポートとして150億豪ドルなどが挙げられた。
オーストラリアでは、一般開業医(GP)を訪問する患者の8人に1人が精神的な健康問題を理由に受診しており、この数は過去15年間で約70%増加している。
精神疾患を抱える人々の数は390万人と試算されるが、このうちサポートや治療を受けているのは290万人にとどまっているのが現状だ。
同委員会は、約100万人の患者が十分な治療を受けていない状況について、GPで対応するには症状が複雑すぎたり、
政府からの補助を受けられる受診が限られていること、精神疾患を恥じて受診を拒む人が多いことを指摘した。
■早期の発見と対応が重要
同報告書ではまた、精神疾患を抱える人の75%が、25歳までに何らかの初期症状を見せているとする調査結果が示された。
同委員会のブレナン委員長は、「就学や就労において精神疾患を患うと、今後の仕事だけでなく生涯にわたって長期的に影響が及ぶ」と述べ、早期の発見と対応が重要と指摘。
「精神的な健康障害は人々や社会、経済に莫大な影響を与える」と述べ、職場や学校、住宅補助などでの改革の重要性を訴えた。
中でも、先住民アボリジニやトレス海峡諸島民は精神疾患を理由とする入院がほかの人々の2倍と高く、自殺に及ぶ可能性も2倍となっている。
特に、24歳未満の若者では、アボリジニやトレス海峡諸島民の自殺率はほかの人々の14倍に達しているという。
生産性委員会は草案で示した改革案の内容について、来年1月23日まで一般から意見を募り、来年5月に最終報告書を政府に提出する予定だ。”(出典:NNA ASIA)