サッカー日本代表及びブンデスリーガ VfL Bochum 1848(VfLボーフム)でプレーする浅野拓磨選手の『奇跡のゴールへの1638日』を読了。
四日市市内で浅野拓磨選手がオーナーを務めるベーカリー「朝のらしさ」で本書サイン本が販売されていることを聞きつけ、現地在住の友人に依頼して入手叶っていた著書。
本書は
” 2022年のワールドカップ(W杯)カタール大会までの4年半、僕は「W杯でゴールを挙げる」という目標のためだけに、本当に毎日を過ごしてきた。
ひとつの集大成と言えるのが、2022年11月23日のドイツ戦で挙げた、あのゴールだ。”(p1)
という約1年前の日本国内を熱狂へと誘(いざな)ったゴールを挙げるまでの苦闘と試練の日々がまとめられたもの。
序章 歓喜 ー 劇的ゴールの瞬間
第1章 落選 ー ベンチにすら入れなかったロシア大会
第2章 苦闘 ー ブンデスリーガで思い知った現実
第3章 底辺 ー 出場機会を求めてセルビアへ
第4章 再起 ー ブンデスリーガへの再チャレンジ
第5章 信念 ー 大会直前に負ったケガからの復活
第6章 帰結 ー ワールドカップでつかんだ夢とその後
という章立てのもと、
カタール大会で雪辱を期す原体験になったロシア大会は、
” メンバー発表の少し前、電話がかかってくる、西野監督からだ。
「残念だけど」という出だし。
「バックアップメンバーでロシアへ同行してほしい」
つまり、W杯を戦う23人から漏れた、という知らせだ。
それほど長い電話ではなかったはずだ。ただただ、頭が、真っ白になった。「どうしよう、どうしよう」。時間が、このまま止まっていてほしい。ひたすらにそう思っていた。”(p35)
という挫折を経て、建て直しを図る中
” 「これはヤバい」。試合映像で見ると不鮮明だが、実は相手とまったく接触していない。ボールが当たった結果、ひざへ変な方向から力が加わっただけだ。本当にちょっとしたプレーだ。それでも、右ひざがおかしい。”(p184)
カタール大会まで2ヵ月という段階で見舞われた出場が危ぶまれてしまうケガとの対峙から香川真司選手らの寄り添いを得て、
” 前回の経験もあり、会見はひとりで見たいという気持ちがあった。ただ、母が一緒に見たいということで、テレビ電話越しの母、そして料理人として僕と同居している弟(五男)と3人で見ることにした。
開始から15分ほど経過したころ、「浅野拓磨」と森保一監督が読み上げた。
・・中略・・
スタートラインに立てた。まだリハビリ中だが、W杯への準備を続けられる。そのことにほっとした。代表に選ばれることがゴールならば、この時点でもっともっと喜んだだろう。だけど、違う。自分でも、これはいいことだと思う。ある意味、落ちることを想像していなかった。W杯に出て活躍する、そのために全力で準備することだけを考えている。だからこのメンバー発表は、本大会の手前にあるひとつの段階に過ぎない。”(p202-204)
と檜舞台( = FIFA World Cup)出場を掴み取り、
” オフサイドの可能性を感じていたのがよかった。どうせオフサイドなら、最後までやりきろうという思いだ。おそらく、僕も相手もオフサイドじゃないと確信していたら、ゴールへ向かうというトラップはできなかった。”(p11)
と本書のハイライトである(カタール大会 ドイツ戦での)歓喜のゴールシーンの回想など、克明に浅野拓磨選手が向き合ってきた感情が赤裸々に綴られています。
氷山の一角かの光に対し、苦悩、試練の日々、影の描写が色濃く印象的で、手に取ってから一気に最終頁まで読まされました。