『豪州読本:オーストラリアをまるごと読む』のおさらい編、第18弾.-
前回で七章を終えたので、全十章あるうち残り三章。今回は「第八章 暮らしのセーフティーネット」からの抜粋です。
世界をリードする社会保障制度
” この章では、暮らしに対するセーフティーネットがどの程度実行されているのか、医療保険制度、老人養護の現状と問題点、老後の年金生活、制度を検証してみる。
限定的な運用であったが、1909年には老齢年金制度が施行され、1910年には疾病年金、1912年には出産手当が創設された背景から、
オーストラリアはこの時期から社会保障の分野で世界をリードした。
日本人のように平時から貯蓄をする国民性でもないが、それでいて退職後の生活が豊かである。これは、社会保障の先進国だからである。
国と企業が手厚い老後保障を提供している。老後の安心を約束している。”(No.3491、3497/数値は電子書籍のページ数に相当。以下同様)
公的年金① 無拠出老齢年金
” 退職後老後の年金(公的)には2種類がある。
1つは無拠出の老齢年金で、財源はすべて国の予算(税)で賄われている。以前は60歳になれば支給されていたが、現在65歳からの支給開始になっている。
一般的に最高保障年金は、単身で月約1,000ドル、夫婦で約1,800ドルである。なぜ最高保障年金なのかは、
支給する前に資格調査でミーンズテストという所得と資産審査があり、あるレベル以上になると年金が減額されたり、支給されない。
所得に関して言えば、夫婦の場合、月456ドル以下の収入であれば、全額最高保障年金が支給される。
それ以上になると1ドルあたり20セントの減額になる。さらに月当たり4,657ドル以上の収入がある人は、基本的にこの年金は受給できない。
また、資格審査に関しては、持ち家とそれ以外の人によって違うレベルが設定されている。持ち家の場合、夫婦で資産総額22万9,000ドル以下、
持ち家でない場合、34万6,000ドル以下であれば全額保障となる。ちなみに、夫婦の場合、資産合計が持ち家で50万9,500ドル、持ち家でない場合62万6,500ドルを超えると給付がない。
公平さを欠かないような制度になっている。ただし自営業者はこの制度の適用外である。”(No.3497、3506)
公的年金② スーパーアニュエーション
” 2つ目は、スーパーアニュエーション(略してスーパー)といって、基本的に雇用主が社員、従業員、職員に代わり老後のために積み立てるというものがある。
法律に規定されている雇用主の拠出義務は、現在被雇用者に支払っている給料の最低9%である。
雇用されている人もこれに加えて自分の給料から拠出できる。
スーパーへの拠出金については、拠出できる金額に関して上限があるが、自由なので日本のように負担にならない。
まったく拠出しないということもできる。拠出すればそれに見合う額を政府が補助してくれる。
退職後の生活のため企業(雇用主)が積み立て、政府の寄与(補助)を受け貯蓄するということで、退職時に一括支給か分割支給になる。
政府の寄付は収入によって違う。この制度は働いているすべての人に適用される。
ただし、月の収入が450ドル以下の人、18歳未満、70歳以上の人には適用しないが、自営業にも適用する制度である。
日本の退職金プラス企業年金ようなものである。この年金制度は、全勤労者の90%以上をカバーし、
2,500万口座が存在しており、総資産は、約100兆円にもなる。受給年齢は、1960年以前の生まれでは55歳時、
1964年以降の誕生日の人は60歳からである。年金収入は従来課税されていたが、2007年からは課税対象から外す政策に変更している。現在は年金収入には所得税がかからない。”(No.3506-3525)
日本の年金事情
” 日本の厚生年金では年金をもらえる資格を取るためには、現在、毎月給料の18.6%(雇用主と従業員の折半)で25年以上拠出する必要がある。
これが65歳から厚生老齢年金が2ヵ月ごとに支給される要件である。
日本の場合は退職後の年金生活に関する生活保障は政府財源との兼ね合い、税制改革、受給負担の見直し、消費税の引き上げなど
今後の改革により将来どのようになるのか不透明感があり不安がある。
オーストラリアはなぜこのように羨ましい年金制度ができるのか、それは、老後の生活保障は、政府が責任を持ってやるという歴史的哲学と、所得税が日本と比べて高いからである。
高い税金を取って年金を充実されるのか、税金を低く抑えて後は自助努力なのか、それぞれの国の政策である。”(No.3525-3543)
日豪間の社会保障協定
” オーストラリアの年金生活は快適である。老後の生活費は、もちろん都市によって差があるが、
アデレード、パースなどでは夫婦で年間2万2,000ドル(220万円)あれば、十分質の高い老後が過ごせる。
質素で、倹約生活とは違う、ゆとりのある生活、余生が送れる。
無拠出で政府が税金から支給している老齢年金がこの金額である。なお、日豪間では社会保障協定が2009年から発効し、
二重保険料払い込みの解消と日豪国民年金保険の通算が適用されている。”(No.3543、3552)
選択の幅を提供する、日豪間の取り決め
税率等、記載内容は出版時点(2011年2月)もので、直近の状況は適宜確認が必要となる点、ご留意下さい。
本文ではスーパーアニュエーションによる支給額のシュミレーションなど、更に掘り下げた内容となっています。
最後の日豪間における取り決めがあることは、移住を検討されている方々にとっては、大きな判断材料になりますね。
第八章、未了につき、次回も続けます。