移住の理想と現実 ⑫
” 本章は、様々な理由によって日本社会を逃れた日本人ライフスタイル移住者の移住後の生活について考察し、
定住プロセスや移住後の仕事や余暇について、インタビュー・データをもとに論じた。
本章では第一に、彼ら日本人移住者の居住地選択のプロセスや定住パターンについて論じた。
この点については、移住後しばらくは移住前に抱いていたオーストラリアのライフスタイルのイメージに適合する場を選ぶ傾向を示し、
ライフスタイル価値観と、移住後の居住地選択の関連性について指摘した。
また、その一方で、一定期間後、特に経済力が限定的な若い居住者の間で、仕事や教育に利便性の高い現実的な場所へと移動する傾向が強い点を示し、中間層の移住の理想と現実をめぐるギャップも明らかにした。
第二に、本章は彼ら日本人ライフスタイル移住者の仕事と余暇に関する考察を行い、以下の点を指摘した。
日本社会の中間層に属し、一定の職務経験を有する者が大半を占める日本人移住者は、
移住によって経験する社会階級の下方移動を肯定的に受容し、それによって得られるバランスの取れた生活を享受している傾向が見られる。
無論、経済的・社会的により良い生活を送るための努力は行っているものの、他のアジア系移民やかつての日本人の経済移民の時代と比較すれば、
その温度差は大きく、余暇の傾向として家族との時間や日常に溶け込んだ余暇を楽しむ傾向が見られる。”(『日本社会を「逃れる」オーストラリアへのライフスタイル移住』p192-193)
3月7日から出典図書(上掲)のオーストラリアの移住体験談を引用してきて、
今回は章全体のまとめとなるため、引用箇所外の内容も含まれますが、今シリーズは次回で一旦、区切りとして
また、機会を改めて「オーストラリア移住」に関してフォーカスしたいと思います。