クリス・ギレボー『自分再起動』を読了。
と、著者名を書いても反応が薄いと思われますが、昨年一部で話題を集めた『1万円起業』の著者の新刊。
先日、作業中であったパソコンにポップアップに指示されるままOSのアップデートを試みた際・・
思わぬ時間がかかることが判明。その時間潰しにと図書館で巡り合った一冊。
時代を先取りした人たちに学ぶ教科書
本の冒頭、(監訳者の)本田直之さんが「監訳者のことば」で・・
” 無理して日常に生きなければならない時代は終わりました。端的に言えば、自分が好きなことをやった者勝ちの世の中になったのです。
自己実現という意味でもそうですし、それを発信することによって、仲間が増えたり、仕事に結びついたりといった面白いことがすぐに起きる。
本書には、それをいち早く成し遂げた人たちの成功談が詰まっています。”(位置No.9:電子書籍のページ数、以下同様)
と本書を紹介。また、時代背景に関して
” 旧来のものさしで「自分のやりたいことは現実的かどうか」とつい考えてしまう人は、どうか本書を読んで「思考の設定」を180度切り替えてください。
今そうしておかないと、貴重な人生の残り時間を、頭にこびりついた古いフォーマットのせいでムダにしてしまうでしょう。
新しい常識に合わせて、「自分再起動」をする必要があります。”(No.9、16)
さらに、
” 好きなことに取り組み、発信するだけで、遊びと仕事の垣根のない生活を始めることができる。あとは、やるかやらないか、というだけの話です。”(No.24)
として、本書の意義、現実性を説明されています。
人それぞれ成し遂げたいことがある
で、具体的に本書に登場するのは、世界全193ヶ国を旅した著者のクリス・ギレボーであったり、
アメリカ50州で(各州で1人づつ)50人の男性とデートするクエスト(冒険)を掲げた女性であったり、
すべてのメジャーリーグ球場で観戦するクエストを掲げた父子など。
社会貢献、未来を示すなど、他書で見られたような広く一般に生き様を問うたようなスケールにあらず、
個々人が心の声に従って浮かび上がった「自分で決めた特別なゴール」へ向けてチャレンジしていった人たち。取材対象者は元手をかけずに年収500万円以上のお金を稼いだ1,500人。
クリス・ギレボーは、本を読んだ効果と・・
” みなさんはいくつもの驚くべきストーリーを目にする。これらの大半は、驚くべきことをやり遂げたごく普通の人々の物語だ。
生まれつきの才能で成し遂げたのではなく、自分が選んだことに打ち込んだ結果でできたことなのだとわかるだろう。
私は自分の好奇心を満足させたいだけでなく、読者のみなさんがそれぞれに価値ある人生を手に入れてほしくてこの本を書いた。
あなたの目標が何であれ、本書には参考になるヒントが詰まっている。
やりたいことがある人なら誰でも、この本を読みながら多くの教訓を学ぶだろう。”(No.150)
読者へのメッセージを上記の通り送っています。なお、本書にしばしば出てくる「クエスト」とは・・
” 新しいことを学び、慣れ親しんだ場所の外側に広がる地平を探求しながら、自分がどれくらいできるのかを試すことだ “(No.809)
と定義。大局的に捉えると
” 私たち一人ひとりは自分の人生で自分自身のストーリーを書いており、それをうまくやり遂げるチャンスは1回きりしかない。”(No.2313)
そのためにクエストは
” あなたの人生の目的と意味を与えてくれるということだ。”(No.2313)
不満はポジティブな変化のきっかけとなる
これら「自分で決めた特別なゴール」へ向けて動き出した人たちは・・
” なんとなく周囲から浮いている感じや、はっきり原因がわからない欲求不満を感じたことがあるなら、それが不満と呼ばれるものだ。
不満が芽生えたときは、ポジティブな変化を起こすとき。あなたが感じた通り、別の生き方が必ずあるからだ。”(No.169、176)
と、日常生活の不満が、多くの人たちに共通したキッカケになっている点を指摘。
” ただし、不満だけでは、やる気を起こさせ、クエストを始めさせる力はない。不満を抱えたまま生きている人はたくさんいるが、
大半は人生に根本的な変化を起こそうとしないし、ましてやクエストにとりかかる人は少ない。
くすぶっている火を燃え立たせるには、誰もやろうと思わないぐらいのスケールのことで、不満を解消するアイデアを考えてみる必要がある。計算式にすれば次の通りだ。
不満+大きなアイデア+行動=自分を変えるクエスト”(No.264、271)
なお、心掛けとして
” 好きなことをしていれば結果的に幸せにはなれるだろうけれど、大事なのは幸せだけじゃない。
むしろ大切なのはチャレンジや充実感であり、ゴールに近づいたときに得られる達成感と努力との絶妙なバランスを見つけることだ。
比喩的に言えば、不満はマッチであり、そこに火をつけるのはアイデアのひらめきだ。
不満が興奮に変わったら、それはあなたが目標を見つけたしるしだ。”( No.286)/ ” どうしてもやりたいことが見つかったら、人はそれを放り出したくないものだ。(No.1332、1338)”
さらに、
” 目的のある人生を生きるには、運命と断固とした自由意志の両方が必要だ。あなたが運命と自由意志のどちらを信じようと、結局そのふたつは少しづつ混ざり合っているので、
自分のなすべきことに従って生きる人は深い使命感を感じてることが多い。”(No.337)
と、当然のことながら覚悟の決め方も問うています。
” 「思いきって決心したら、がまん強く・・・ とにかくがまん強く、あきらめないこと。(中略)」”(No.689、698)
” 他に誰も信じてくれなくても、あなただけは自分のクエストが成功すると信じなければならないということだ。
困難を乗り越えて目標に到達できると自分が信じている限り、挫折や不運、ときにはとんでもない災難に見舞われても立ち向かっていける。”(No.787)
実践者の一人が直面した覚悟とは具体的に
” 私はひとつの生き方を試す立場を選んだ。だからみんなが私を試そうとするのは当然だ。私は自分自身を試している」”(No.378)
といった周囲との交わり方の中で問われていった過程が示されています。周囲に理解されない場合でも
” 他人にさっぱり理解できなくても、あなたが何かに夢中になっているなら、その過程そのものが報酬を与えてくれるだろう。”(No.434)
と周囲の反応、経済性を考えるより、何より
” あなたが夢中になれるものは何だろうか?一瞬でもあなたが我を忘れるのはどんなときか、よく考えてみよう”(No.438)
この一文に、クリス・ギレボーがこの本を通じて読者に問いたいメッセージが込められているように思います。
以降は本の前段(上記引用箇所)を受けて、クエストにチャレンジしていったものたちのストーリー、学んだこと、読者が学べること、心掛けるべきことなどについて分量が割かれています。
新たな生き方を始めるために必要なたった一つの条件
なお、例えば本書の続編が企画されたとして(←私が勝手に書いていることですが)、
その候補者となるためのただ一つ必須条件が、本に記載されており
” 自分のクエストを公開することです。SNS、インターネットなどで公開し、自分のメディアを持つ。
メディアにはストーリーがなければ誰も見てくれませんから、冒険を発信していくことで、支援者が現れることもあるでしょう。”(No.47)
途中で触れたことになりますが、本書で書かれていることはジェフ・ベゾス(amazon)やスティーヴ・ジョブス(Apple)のように
社会にインパクトを与えて、未来を示すような大それたことではなく、人からどうでもいいと思われるようなことでも
本人にとっては大事に感じたことを宣言して、ときに周りの助けを得ながら、それに没頭して実現していくプロセスに人生に目的と意味を持たせていくということ。
人の目を気にせず、自分の価値観を最も尊いものとした生き方の実践となりますが、
まだ自分の身近に居なくとも、世の中には着実にそういうライフスタイルを選択している人が増え、
ゴールに辿り着いた人も世界各地で現れており、それらがまとめられた手引き書と言えます。
日常に「不満」を感じていない人を探す方が難しいのでは?と思いますが
クリス・ギレボーが示した選択肢、示唆に富んだ一冊と思います。
最後、自身のクエストを選択し生涯を終えた人の述懐を引用して締めくくりたいと思います。
” 「このゲームに終わりはない。考え方をかえればいいだけだ。生きている限り、いつでも新しい行き先があり、わくわくするような新しいものが見つかるはず」”(No.2337)