元外務省主席分析官で、専門分野が多岐に及び著書も数多に及ぶ佐藤優さんの『ゼロからわかるキリスト教』を読了。
もともとは先月(2017年1月)開催↓の「東京大地塾」参加にあたり
「(登壇される)佐藤優さんにサインしてもらおう」という目的で購入した経緯でしたが、
その時の講演が、ドナルド・トランプ大統領の頭の中をキリスト教的価値観から読み解く内容となり、
やがて読んでみるつもりであったもののタイムリーな入手となり、楽しみにしていた一冊。
キリスト教、そして宗教の本質
難解とされることの多い佐藤優さんの著書の中では中〜上級といった印象を受けましたが、
” 最初は知的好奇心でスタートしたキリスト教神学の勉強だったが、
いつのまにか、それによってキリスト教の神に引き寄せられ、大学一回生のクリスマス礼拝のときに私は洗礼を受けた。
それから、私のキリスト教信仰が揺らいだことは一度もない。”(p4)
というご経歴をお持ちで、本は主として2015年1月及び3月に開催された新潮講座「一からわかる宗教」を活字化したもの。
約160ページに及ぶ講義内容から引用すると
” キリスト教は人間を現実的・具体的な苦しみから解放する<救済宗教>ですから、キリスト教を信じることによって救われたと思えないと、宗教として機能しなくなります。
その危機感から、腐敗してしまったローマ教会を否定し、イエスの教えた単純な福音へ戻れ、原始教会へ戻れという復古運動が生まれました。これが宗教改革であり、プロテスタントですね。
ちなみに言うと、プロテスタント側からは<宗教改革>なんだけど、カトリック側の用語だと今でも<信仰分裂>と呼んでいます。”(p31)
というキリスト教の基礎的理解に
” フリードリヒ・シュライエルマッハー(最近はシュライアマハーと表記されることが多いですが)という一八世紀の終わりから一九世紀に活躍したドイツの神学者がいます。
この人が主著である『宗教論』(一七九九年)の中で「宗教の本質は直感と感情である」と規定しなおして、神様の居場所は心の中であるとしたのです。
直感と感情で捉えるのだから、神様は心の中にいるんだと。では、みなさん、心ってどこにあります?
胸?頭?お腹? 心って、空間上に示すことできます?できませんよね。
心を想定することによって、<上にいる神>などということに煩わされずに、
つまり近代以降の理性中心の考え方と矛盾しない形で、神を信じることができ、神学を展開することができるようにした。”(p31-32)
宗教の本質(解釈?)に、二夜にわたって行われた講義を
第一夜 神はどこにいるか?
第二夜 神の声が聴こえる時
と題し、学説などを踏まえ論が展開されていきます。
本の構成で理解を助けてくれたのは、講義で受講生に出された宿題の問題が書かれ(p74-76)、そこを要点と捉えられること。
第二夜の序盤で回答例も示され、また、
” さて、ここまでの論点を短く整理すると “(p110)
といった記述も散見され、進んで戻ってのプロセスから論点を見出せます。
世界を動かしているであろうキリスト教的価値観
日常生活の中で、例えば報道などを通じて触れる機会の少ない馴染みの薄い分野だけに
一読しただけで理解することは難しいにせよ、初学者向けに語られた話し言葉で綴られた本である分、
他の神学、キリスト教本と比較すると、馴染みやすい一冊であるよう感じました。
冒頭で名前を挙げたドナルド・トランプ大統領をはじめとして、先進国の政治的指導者及び上層部の価値観が
キリスト教に基づいて決断、行動しているであろう現実世界を考慮すると、実用性高い内容であると思います。
上記に引用した以外の部分でも、「神の声」について言及した箇所で、外務省か(当時)鈴木宗男代議士か選択を迫られた時のお話しや
こういった分野での学びを深めるコツについて受講生に語られているシーンは印象的であったので、会を分けて取り上げることにします。