野球解説者 江本孟紀さんの『変革の檄文!プロ野球を100倍楽しくする方法』を読了。
今月(2018年12月)参加していた江本孟紀さん登壇イベントの対象書籍として購入していた一冊。
「10倍シリーズ」復活のバックグランド
「はじめに」で
” 時は流れて平成30年。解説者として知識と経験を積み、またも出版の依頼をいただいた。いまやプロ野球選手のスキャンダル程度では、世間の人をアッと言わすことなんてできない。
世を揺るがす「文春砲」ですら「ネタの対象」にしないはずだ。
それならば「世の野球ファンがこんなことを考えているんじゃないかな」というテーマについて語ったほうが、面白がってもらえるんじゃないのか、またそのほうが僕のこれまで蓄積した知識を生かすこともできる。
そういう理由から今回出版したのがこの本である。”(p4)
という出版経緯について説明された後、今、野球界の話題の中心 大谷翔平選手の二刀流に関して
” 仮に、大谷がシーズンを通して二刀流の働きをしたとしよう(4〜9月までの半年間、投手としての登板日を毎週日曜日に設定。
火曜日から金曜日まで打者として出場する。土曜日は投手としての調整日にあてる)。
単純計算で、投手として月4試合x6カ月=24試合、打者としては毎週4試合x4週(1カ月)x(1カ月)x6カ月=96試合ということになる。
投手としての登板は、勝敗や防御率はさておき、1試合7回を投げたとすれば、24試合x7回で168回となる。
打者として1試合に4打席立ったとすれば、96試合x4打席=384打席はシーズンを通して立てることになる。
この結果から見えてくるのは、投手として規定投球回数に達しているから、リーグナンバーワンの防御率に抑えることができれば、そのタイトルは獲れる。
だが、384打席では規定打席数の443には及ばない。ということは、なみいる強打者を抑えてどんなに打率が抜きん出たとしても、「首位打者」のタイトルは永遠に獲ることができず、大谷の残した数字は「参考記録」扱いになってしまうのだ。
つまり、二刀流を追求すればするほど、投打ともに中途半端な記録となるー。”(p18)
と江本孟紀さんの持論である二刀流封印論に始まり、
2018年の夏頃までのペナントレースから浮かび上がってきたこと(讀賣巨人軍 高橋由伸前監督ほか監督たちの采配、東北楽天ゴールデンイーグルス不振の原因 etc)など。
野球解説者としての矜持
読み応え感じたのは中、後半の
” 昔に比べて、球団経営は順調だから、選手の年俸も上がる。在京のメリットはもはや大したものではない。
たとえ地方球団でも、地元メディアがあり、地元企業のCMにバンバン出れば、「おらが町のヒーロー」になれるというわけだ。
その結果、選手たちに芽生えてくるのは、「今以上に有名にならなくたっていいや」という、ある種、マイルドヤンキー的な地元志向である。
決して中央、つまり東京を目指そうとは考えない。かつての僕たちのように、「全国の人に名前を知ってもらえる有名人になりたい」という欲望なんか、消え失せてしまっているのだろう。
だから、今の選手たちは、「ローカルスター」にしかなれない。”(p83-84)
という現代のプロ野球選手気質に、
” 解説に対しては、視聴者からの反論の1つや2つくらいなくてはダメだ。反論があるのは、僕の意見に耳を傾けているからこそである。
「反論や批判こそ最高の賞賛である」と考えることができるかできないか。その差は解説者の力量に顕著に現れる。”(p185)
といった持論のもと、大阪の番組でセ・リーグの順位予想で阪神タイガースを下位にすることを躊躇わない里崎智也さんに期待を寄せられていた箇所など。
解説者としての矜持は「おわりに」でも
” 僕の解説者としてのキャリアは37年目に入った。つまり、実年齢の半分以上は解説者として歩んできたのだ。
そしてガンを患ったことで、「悔いのない人生を送りたい」と強く思うようになった。
今は本音を言えない時代になりつつある。本音を言ってしまえば、メディアはもとより、インターネットで一般の人からも酷評されてしまう。
そのことを恐れている結果、各方面に「忖度」を働かせてしまっているタレントや文化人が多い。
だが、僕はそうした世間と、これからも真摯に向き合っていきたい。本音を言えない解説者など、何も面白くない。
1人でも多くの人に、野球の楽しさや素晴らしさを伝えていくためにも、「現役の野球解説者」であることに、僕はこの先もこだわり続けていきたい。”(p248-249)
で締めくくられており、
これは先のトークイベントでも感じていたことトークの絶妙さ(面白さ)に加え、
数多いる球界(球団)に気兼ねする解説者の中で、本音ベース(裏側を見せる)の解説者の先駆者として覚悟に、芯、ブレない軸を保とうとする姿勢がにじみ出るように伝わってきて、
久々のエモやん節でしたが、高度な(独自の)専門性とともにプロ野球ファンとして痛快な思いを抱かせて頂いたひと月となりました〜