評論家 江崎道朗さんが、インテリジェンスの本質を質した『インテリジェンスと保守自由主義 新型コロナに見る日本の動向』を読了。
夏(2020年8月)に読んでいた百田尚樹さんとの対談本
に次ぐ、江崎道朗さん本第二弾.-
共産主義と反共の攻防
本書は、
第1章 インテリジェンス機関設立の背景
第2章 スパイ防止法に基づいて弾圧されたバルト三国
第3章 同盟国を盲信するな ー ポーランドの悲劇
第4章 ソ連の人権侵害と戦争責任を追及するヨーロッパ
第5章 国際共産主義と闘い続けた日本
第6章 インテリジェンスを国策に生かす仕組み
第7章 新型コロナ対策が後手後手になったのはなぜか
第8章 自主独立を尊ぶ保守自由主義
第9章 インテリジェンスを支える富国強兵
の章立てのもと、
前半は
“「平和を欲するならば、愛国心を否定して労働者を団結せよ」と異常なほど国家を否定するプロパガンダは、このコミンテルンから始まりました。
そして、その系譜を引き継いでいる労働組合の一部は、いまだに愛国心を敵視しているのです。
要は「労働者たちよ、自国を否定してコミンテルン総本山のソ連に従え」ということのなのです。
「労働者の祖国であるソ連に従うことが世界の平和につながる」というロジックが共産党の基本思想なのです。”(p23-24)
或いは
” このようにしてマスコミの社員たちを次々と共産党系のユニオンに加盟させ、新聞社や出版社を乗っ取っていったのです。
かくして戦前のアメリカにおいて、マスコミは次々との共産党系労組に加入し、ソ連・コミンテルンの指示通りに反日宣伝を始めたのです。”(p28)
と世界史から紐解いた共産主義拡散を意図した動きに。中盤は
” 敗戦後の日本を「共産化」すべく、スパイや協力者を日本に送り込んでいたのが、「戦勝国」だったソ連でした。”(p101)
に、
” 繰り返します。戦後初めて「国家安全保障戦略」を作ったのです。
第二次安倍政権のもとで「国家戦略がなく、場当たり的に国際政治を考える政治」から、「我が国を取り巻く内外情勢の中で何に優先的に取り組まなければいけないのかということを、周到な情報収集と分析に基づいて考えていく政治」へと、劇的に変わろうとしてきているのです。”(p117)
遅々としながらも大きく踏み出している日本国内の動きを。
そして、保守自由主義
後半は
” トランプ大統領を始めとするアメリカの保守派は、旧ソ連や中国共産党政権、そして北朝鮮といった共産党一党独裁体制を厳しく批判しています。
ですが、共産主義体制を批判するだけではダメだと考えているのが、アメリカの保守派なのです。
何よりアメリカ自身が「自由主義の国である」ことが重要であり、保守自由主義のもとでアメリカを繁栄させることこそが共産主義体制と戦うために必要だと考えているのです。”(p153-154)
また、
” 所得税などを減らすことで個々人の手元に残るお金を増やしたのです。
医療を含む社会保障費の充実と称して消費税を上げ、官僚組織が使える資金を増やし、国民の可処分所得を減らした日本政府とは対照的です。
・・中略・・
トランプ大統領のこの政策は、当然のことながらアメリカの官僚たちから厳しく批判されています。
官僚たちと仲の良いアメリカのマスコミも、だからこそトランプ政権を厳しく批判しているのです。
彼らは、国民から多額の税金を取ってその税金を使って、より良い政治をするのは自分たち官僚だと考えているからです。”(p158/p163)
など、最終盤を迎えているアメリカ合衆国大統領選の側面を垣間見せられる言及も交え
アメリカ国内で繰り広げられている反共最前線に、世界史実から直近の状況に至るまで
共産主義の根源的な思想、意図を明らかにして、然るべき道筋が示されている内容が、簡潔に分かりやすく書かれている著書で、
その明瞭さから更に江崎道朗さん本を触れ、未開の領域を切り拓いてみたいとの心情を抱かされました。