藤崎沙織さんが向き合ったSEKAI NO OWARIが走り始めるまでの日々:『ふたご』読了

SEKAI NO OWARI Saoriさんこと藤崎沙織さんの『ふたご』を読了。

昨年(2021年)秋に読んだエッセイ集から↓

<< 2021年10月21日投稿:画像は記事にリンク >> 藤崎沙織さんのアーティストの感性で綴られた日常に惹き込まれた:『ねじねじ録』読了

次は〜 といった具合で、直木賞候補作にもなった本書に注目していた経緯。

実体験に基づいたからこその

二部構成で、

” 家族が誰もいないのをいいことに、ソファの上に足を投げ出した。中学校は休みだ。”(p012)

の一文で始まる本書。主人公の西山夏子と一学年先輩 月島悠介との

” ただ関係を聞かれただけで、こんなにも傷ついてしまうのはどうしてなのだろう。月島と私だけが分かっていればいい。その考えがこんなにも脆いものだと思い知らされる日が来るなんて、想像してもみなかった。”(p119)

と、先輩後輩でもなく、友達以上ながら恋人でも括れない且つ刃物を突きつけられたりもする危なっかしい綱渡りの関係が、

第二部に突入すると

” 残高一万円で物件を借りて音楽をする計画を思い立つなんて、何を考えているんだろう。一体誰が払うと思いながら、無計画な夢物語を話していたのだろう。”(p188)

と、バンド活動、地下室といった文言が登場してきたあたりから自分が断片的に知るSEKAI NO OWARI情報とリンクして

「あれ、これ私小説かな?」と思いながら読み進めていけば、

入手本に書かれていたサイン+落款

巻末の藤崎沙織さん自身による「後書き」で

” 全く関わりのないジャンルは書ける気がしなかったので、自分の経験をベースに、バンド結成の話を書こうと思いました。それが、地獄の始まりでした。”(p322)

とあり、「道理で描写に感情表現がリアルなワケだなー」 と納得。実に五年に及んだとの創作期間中には

“「ふたご」の世界から抜け出せずに、眠れなくなってしまう日もありました。”(p324)

というほどで、設定的には(本書と)同じくデビュー前のバンドを題材にした ↓

<< 2021年6月30日投稿:画像は記事にリンク >> 高見澤俊彦さんが描いた70年代にプロデビューを目指した若者たちの苦悩と脚光:『音叉』読了

高見澤俊彦さんの『音叉』を思い出しましたが、

スポットライトを浴びている眩しき瞬間とは対照的な影の部分に、その領域を突き抜けてこられた方の苦悩、思いを読み取れた部分、読み応えとしてズシ〜ンと響いてきました。


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