元経産官僚で政策工房代表取締役社長 原英史さんの『総務省解体論』を読了。原英史さんの著書は ↓
先月(2021年10月)読んだ『国家の怠慢』に続いて2冊目ですが、「(原英史さんの)代表作としては本書かな」と気になっていての入手。
日本の命運を担う省庁のこれまでと現在地
冒頭の「まえがき」で、
” コロナ危機に直面して、なぜ日本政府の対応は頼りないのか?
なぜ国と自治体の役割分担は混乱しているのか?
なぜデジタル化はこんなに遅れたのか?
なぜ新聞・テレビはデタラメだらけなのか?
本書はこうした疑問を解き明かしていく本だ。”(p2)
と、ただならぬ問題提起のもと
第1章 国家の心臓部の機能不全
第2章 接待問題の根源は「電波割当」
第3章 競争と革新が阻まれた「通信行政」
第4章 テレビ衰亡を招いた「放送行政」
第5章 地方自治を信用しない「自治行政」
第6章 分断された「行政改革」
第7章 総務省の外郭組織
終章 総務省改革プラン
との章立てに沿い、問題点に実態にと論が展開されていきます。
まず、立ち上がりに関して
” 3省庁が、橋本龍太郎内閣の主導した省庁再編で統合されることになった。だが、ちょっとみればわかるように、3つの分野の関連性はない。
バラバラな分野を無理やりくっつけた不思議な組織だ。これが総務省本質である。
・・中略・・
玄関の看板にはいちおう「総務省」と書いてあるが、一歩中に入れば、「旧郵政」「旧自治」「旧総務」という3省庁のままだった。”(p16/p18)
という今も変わらぬという機能不全が生じる根本に、
” この間の30年を経て、今も同様のスタイルで行政運営しているのが「旧郵政省」だ。「ともかく事前に相談せよ。おとなしく従うなら、悪いようにはしない」という方式だ。”(p40)
と具体例は
” 日本の携帯事業者は、世界で稀な「安価に電波を利用できる環境」を与えられた。他国の携帯事業者は高額な入札で帯域を競り落とさなければならなかったのに対し、日本の事業者は、総務省に帯域を割り当ててもらえば、あとは安価な電波使用料だけ払えばよかった。
しかし、この有利な環境を活かすことができなかった。低廉な料金は実現せず、5Gの普及は世界から遅れてしまった。
寡占状態で顧客を囲い込むビジネスモデルに安住し、その一方で、アップルとの不当な取引関係など、グローバルな巨大事業者からは利益を吸い上げられ、結局は消費者に転嫁してきた。”(p74)
等、本書で詳らかにされていますが、脱力させられる経緯に、
” かんぽの不正販売問題も、実はこれが背景にあった。上乗せ規制で足かせをはめられているため、商品・サービスの魅力で勝負できない。だから、職員にノルマを課して営業強化するしかなかった。
この問題では「民営化したためノルマが強化され、負の側面が表れた」などとコメントする人が少なくなかったが、二重に間違っている。民営化は停滞中であり、停滞が不正販売の要因だった。”(p214-215)
と、一時国民的関心事にもなった?郵政民営化のその後と、近年報道を賑わせた問題の真相に・・
実は我々の日常生活との距離近しい省庁
携帯電話に、TVほかの電波事業に、私を含め多くの人たちにとって実は日常生活に密着した部分を広く所轄する官庁で、
昨年から今年にかけて接待問題等の不祥事で騒がれ注目を集めた省庁ですが、これから真価を問われる舵取りに決断に、国民の関心も高いレベルで維持されることが求められる省庁であることを硬いテーマでありながら、内容に課題を分かりやすく書かれた著書でありました。