年末年始(2020-21)を跨いで読み進めた著述家 細田昌志さんの『沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝』を読了。
中間記⬇︎をアップロード後、
程なく
” この白羽秀樹こそ、のちに沢村忠となるからである。”(p277)
と、本の主人公 野口修さんの運命を決定づける沢村忠さんが登場し、
” << ハデな真空飛びヒザ蹴りでファンを楽しませ、じつに百十七連続KO勝ちなどという「超人的記録」まで打ち立てた、あのキックの「キックの帝王」沢村忠(最終戦績=240戦231勝5敗4分、227KO勝ち)>> “(p481-482)
と注釈は入りながらも時代を背負ったことが伝わる戦績に、もう一人の運命的な出逢い
” 世の中が三谷謙の「敗者復活劇」を気にしていた。ただでさえ、視聴率25%の高視聴率番組が、三谷効果でさらに上昇した。
「今週の三谷どうだった?」とサラリーマンが話題にしていたというから、大袈裟ではなく一種の社会現象になっていたのである。
・・中略・・
「先輩、ありがとうございます。実は新しい芸名がつきました。『五木ひろし』です」”(p402/p407)
と、芸能界の大御所 五木ひろしさんを芸能界で売り出し、新興事務所ながらレコード大賞を受賞し、世界戦略としてラスベガス公演を華々しく手がけ、
引いては築かれた人脈から
” 「まだ見ぬ大物」と呼ばれたエルビス・プレスリーは、日本公演どころか来日経験すらなく、その実現が熱望されていた。
ただし、それは日本だけではなく、アメリカとカナダ以外ではコンサートを行っていなかった。
・・中略・・
にわかに信じられない話だが、平尾昌晃は次のように証言する。
「本当だよ。あるとき、野口さんと洋子ちゃんが、『五木にロカビリーをレッスンしてほしい』って言うわけよ。
『エルビス、本当にやるの?』って訊いたら『もう動いている』って。ひっくり返りそうになったよ。”(p487)
というエルビス・プレスリー死去で水疱に帰してしまったものの、昭和を生きた知られざる伝説の人物 野口修さんの生涯が取材出来た範囲で、全553ページに及び濃厚に綴られています。
まばゆい光と差した影
人物評に関しては
” 弟を世界フライ級王座に挑戦させたのも、大山道場とタイ式ボクシングを戦わせたのも、沢村忠を擁してキックボクシングを立ち上げたのも、五木ひろしにレコ大を獲らせたのも、すべて諦めなかったから実現したのだ。”(p474)
に端的にまとめられていると思いますが、一方、強引さと突き抜け過ぎ周囲と調和出来なかった部分から
“「キックボクシングを創った」野口修は、その世界において、完全に黙殺されたのだ。”(p540)
という悲哀に、実際、沢村忠さんとも五木ひろしさんとも喧嘩別れのような形となってしまい、光が強かった分、影も色濃かった人生がよく伝わってきました。
当初、細田昌志さんから野口修さんへ
” 「本を出したいと思っているので取材させてほしい。三カ月で聞き終えて半年で書き上げる。”(p530)
とのオファーから始まった本書が、混迷を極め、出版に要した道のり実に十年。細田昌志さんの執念も伝わる渾身作でした。