百田尚樹さんの『鋼のメンタル』を読了。
百田尚樹さんは、一時話題を独占したかの映画『永遠の0』で圧倒されるも、
その後、個別の発言は覚えてないにせよ、しばしYahoo!ヘッドラインなどに掲載される過激と云うのか、歯に衣着せぬ発言から
挙句、国会の証人喚問招致が検討されるなどのお騒がせぶりから、自然と距離を取っていましたが・・
そのメンタリティに興味を持ったのと、先日、本書を立ち読みした際↓の感じも良く、手に取った次第。
一つ壁を越えた向こう側の境地
本の出出しで、
” 誰だって人から叩かれたり、悪口を言われたり、嫌われたり、仲間外れにされたりするのは嫌なものです。もちろん、私も嫌です。
ですが現代人は、そのことを異常に怖がってはいないでしょうか?
多くの人が他人に嫌われることを恐れて、言いたいことも言えず、やりたいこともやれず、いろいろなことを我慢して生きているように見えます。
おそらく、そうなった時のことを想定すると、「とても耐えられない」と考えているのではないでしょうか。
いや、もしかして想定する以前に、「絶対に耐えられない!」と決めつけているのかもしれません。
でも、それは間違っています。人間の精神力は自分が思っている以上に強いものです。人は皆、自分は打たれ弱いと思い込んでいるだけなのです。”(p14)
という百田尚樹さんの確信のもと、ご自身の経験を踏まえた持論が本書で展開されています。
ありのままの自分を受け容れる
本を読み進めるうち百田尚樹さんらしいストレートな物言いが読者である自分自身に刺さってきて、例えば・・
” 人に嫌われるなんて、そんなことは想像するだけで恐ろしいと思っている人も、実際に嫌われてみれば、全然どうということはなかったとわかります。
皆さん、ベストセラーのタイトルではないですが、嫌われる勇気を持ちましょう。いや、どしどし嫌われる発言をしてみてください。
すると面白いことが起こります。それは、あなたを嫌いになる人と同じくらい、あなたを好きになる人が出てくるということです。”(p29-30)
〜 〜 〜
” 人生の暴風雨に足して、男らしく弱音を吐かずに立ち向かうという姿勢はかっこいいものです。
でも皆さん、そのせいで心の深いところで金属疲労を起こしたり、突発的強風で根こそぎ倒れたりすることがないようにしてください。
そのためにはメンタルを免震構造にすることです。ショックなことがあれば、がんと跳ね返すよりも、一旦それを受けてへこみましょう。
すると面白いもので、人間というのはへこんだ後、ちゃんと元気になるのです。
それを我慢して、あるいは何でもないことだと自分を騙して無理をすると、消えたと思っているショックが見えないところで後々までも尾を引いていることがあります。
・・中略・・
ここで大事なことは、そういうことを言える友人や家族を持っていることです。
愚痴や泣き言を漏らすというのは、ある意味で自分の弱さをさらけ出すことです。
それは心を許した相手でないとなかなかできないものです。そんな相手がいない人は不幸な人と思います。”(p54-55)
〜 〜 〜
” 心は外からのダメージには意外に強いのです。それよりも内側からのダメージに弱いのです。
つまり敢えて言えば、心を壊す人は、自分で自分を壊しているようなところがあります。
人は環境の変化によってダメージを受けることがありますが、実は環境は外部からダメージを受けているのではなく、
自分はその環境にいるという意識が心にダメージを与えているのです。”(p90)
読み手の置かれている状況、それまでの経験等によって、刺さり具合は様々と思いますが、三つ目の「自分で自分を壊している」の言及などは、多くの人が共感出来る内容ではなかろうかと。
社会に外国からの非難を乗り越えてのリアリティ
冒頭の「歯に衣着せぬ発言」に関する内容を本書から拾うと・・
” 朝日新聞、毎日新聞、東京新聞、それに北海道新聞、沖縄タイムス、琉球新報その他の地方紙やテレビ局などでさんざん叩かれるのは、やはりいい気分ではありません。
民主党(現・民進党)、社民党、共産党も、私の発言を何度も非難し、国会で私を証人喚問しようという動きまでありました。
さらに韓国の有力新聞「朝鮮日報」やイギリスの「エコノミスト」誌にまで悪口を書かれ、アメリカの国防総省や中国の報道官に名指しで非難されるに及んでは、「世界中で叩かれているのかいな」とうんざりした気持ちになりました。”(p26)
と、こういった極端な状況を潜り抜けられてきた百田尚樹さんだからこそのリアリティあっての本書と云えますが、
内容はタイトルにある「鋼のメンタル」にとどまらず、
「負けることもまた楽しい(/負けを恐れては何も手に入らない)」p46-48
「(人間の耐久力には限界がある/)辛い時はとっとと逃げよう」p99-104
「自分によってのイチゴを探す(=自分の藪をほったらかしにして、他人の声につられて走り回っているような人は、おそらくそのチャンスに巡り合うことはないでしょう。成功するには、「この藪の奥に、きっとイチゴがあるに違いない」と信じて突き進まなければなりません。」p186-187
など、広義での人生論に、一辺倒ではない柔軟な心がけについても説かれており、
本で展開されている主張の丸ごととは行かずとも、腹落ちした箇所をつまみ食いする感じで、
著者の好き嫌いはあったとしても、本文から元気を貰えたり、背中を押して貰える感覚を得られる刺激的な一冊であると思います。