ベストセラー作家の百田尚樹さんと、日中・中国問題を専門とされている 石平さんの『「カエルの楽園」が地獄と化す日』を読了.-
先日読了した『カエルの楽園』が、
百田尚樹さんがいいたい事を寓話に置き換えた世界であるなら、この『「カエルの楽園」が地獄と化す日』は、
百田尚樹さんが『カエルの楽園」を読み感銘を受けた石平さんと思いの丈を直接ブチまけた対談本で、そのインパクトたるや・・。
『カエルの楽園』を後追いしている現実
要旨を本文から拾うと・・
” 百田 『カエルの楽園』を発表したのは二〇一六年の二月ですが、前年の秋には書き終えていました。
石平さんと同じように、当時は自分でも、まさかここまでの状況にはならないだろうと高を括っていました。
いまのままでは、日本がこんな悲惨なことになる恐れもあるという、警告の書のつもりでした。
こうなってほしくない、こうなってはいけないという想いで、多くの人に読んでもらおうと書いたわけです。
しかし不幸にも、二〇一六年に入ってからの日本を取り巻く国際状況は、まるで『カエルの楽園』に書かれたことそのまま。
あたかも本をなぞるように、現実が推移しています。
『カエルの楽園』では、ナパージュを守っていたスチームボートという鷲が去っていくのですが、
二〇一六年のアメリカ大統領選で有力候補が「在日米軍を引き上げるぞ」と言い出しました。
その後、ウシガエルが崖をよじ登ってくるように、中国が漁船や公船だけでなく、ついに軍艦で領海侵犯を始めました。
警告の書だったはずが、予言の書になってしまった・・・。”(p20-21)
という『カエルの楽園』出版時の状況から、その後の時間経過に・・
” 琉球新報ネット記事によると、「第2回琉球・沖縄最先端問題学術会議」が同十六日までに中国・北京で開かれた。
主催者は中国戦略・管理研究会、北京大学歴史学部などです。
日本の沖縄をテーマとした「国際会議」が、那覇でもなければ東京でもなく、中国の首都・北京で開催されたのはいかにも奇妙な出来事でしょう。
さらに不可解なのはその中身です。この記事によると、会議において「沖縄の自己決定権や米軍基地問題、独立などをめぐって意見を交わした」といいます。
沖縄の「米軍基地問題」や「独立問題」は、言うまでもなく日本の国防・主権にかかわる重大問題でしょう。
こうした問題が、中国という第三国の研究機関主催の会議で議論されたことは異常というしかありません。”(p161-162)
という驚愕の現実に、お二人の知見をもとに本書ではこれでもか!というくらいの悲観論(と思いたい)が展開され、
チベットやウイグルで起こった史実などを踏まえ、現実認識に在るべき姿が示されています。
沖縄を巡る現実と深層
その描写から中〜後半は目を背けてしまうほどのえげつさでしたが、
本で力説されていることは、
” 百田 あとは沖縄の問題をどうにかしないと。最悪のシナリオは、沖縄の暴走と独立から始まります。
沖縄を失えば、日本は終わり。すべては沖縄の今後にかかっています。
石平 沖縄を守らないといけません。ここが戦いの最前線です。沖縄の米軍基地が存続できるかどうか。
そして憲法改正が数年以内にできれば、最悪のシナリオは避けられます。
逆に朝日新聞や中国は、何としてもそうはさせじ、とあらゆる手段を使ってくる。”(p254)
その前段には尖閣諸島を巡る攻防にも言及されていますが、沖縄の背景には
” 市民運動で米軍の行動の自由を制約するだけでも、大いに効果があります。中国の工作は、日本人が思っている以上に深く沖縄に浸透していて、
日本人の市民活動家を使って日米の分断を図り、米軍の行動の自由を奪うように二重三重に仕掛けてきますから、非常にしたたかです。日本人の左翼活動家も、公船も漁船も、軍艦も使う。”(p144)
という動きが指摘され、
本を読むまでは、ニュース等で米軍基地の移転問題で揺れる県内の苦悩というような捉え方をしていましたが、
本書では次元が異なり、対処を誤れば国の命運をも左右してしまうという状況に、それまでの認識を一気に書き換えられました。
知られざる現実、考えるべき未来
事実の捉え方は、立場や該当分野に対する学習度合いによって様々と思いますが、専門家お二人の二日間合計八時間に及んだとの議論の模様は、
青山繁晴さんの指摘とも符合する箇所があり、
客観性も感じました。何はともあれ自分の現状認識の甘さを痛感させられる内容で、読了後の重量感とともに軽い喪失感も味わうことに。
本を閉じて、今すぐどうこう・・ という心持ちにあらずも、考え、認識を改めるところは然るべき方向に向けるところからですね・・。