百田尚樹さんが、新書に込めた危惧する近未来と反戦への切なる思い:『戦争と平和』読了

百田尚樹さんが、ご自身で「真面目に真剣に書いた反戦論の本」

出典:百田尚樹公式Twitter(画像はツイートにリンク)

と思いを込められている『戦争と平和』を読了。

本書については巡り会いがなく、(出版から)約2ヶ月を経過しての購入。

 第1章 ゼロ戦とグラマン

 第2章 『永遠の0』は戦争賛美小説か

 第3章 護憲派に告ぐ

という三章立て。

日本人と戦争

第1章の前の「まえがき」で、

” 「平和」について語るには、「戦争」を知る必要があると、私は考えています。

『永遠の0』を書いた時、大東亜戦争について徹底的に調べました。個々の戦闘から大局的な戦略、さらに当時の軍隊や兵器についても研究しました。

その結果、見えてきたものは ー 「日本人は戦争に向いていない民族であった」というものでした。

これは驚きでもありましたが、同時に、これが日本人の本来の姿なのかもしれないという不思議な安心感を覚えました。”(p3-4)

という紐解きが、第1章のゼロ戦設計から切れ込まれていって興味深いです。

平和、であるために

第2章は、平成に入って最も売れた小説『永遠の0』が世に出た舞台裏話しに、小説を通じて読者に伝えたかったこと。

第3章は、

” 国を守る力のない国家は、どんな運命を辿ったのか、アジアやアフリカの歴史が証明しています。

多くの国がヨーロッパの列強に、国土を奪われ、虐殺され、奴隷にされたのです。

南北アメリカ大陸でもインディアンたちは大量に虐殺され、同じ目に遭いました。

また現在でも、チベットやウイグルは国土と主権を奪われ、多数の民衆が虐殺されています。”(p188)

という史実に、

” リアリストの典型的な国はスイスです。「永世中立」を宣言し、二〇〇年も戦争をしていないにもかかわらず、

今も国民開閉で強大な軍事力を持ち続けているのは、万が一の有事に備えてのことなのです。

その対極のロマンチストの典型は、かつてのルクセンブルグです。しかし二〇世紀に起こった二度の大戦争で国土の蹂躙されたルクセンブルクは、今やリアリストになりました。

国を守るために必死で核開発をしている北朝鮮もまたリアリストの国家です。”(p216)

という現実に・・

” 当たり前のことですが、結局のところ、日本を守るのは日本人なのです。

日米安保は強力な担保です。しかし「日本人は日本が守る!」という強い意志を示すことができない国家は、アメリカ軍でさえも守ることはできません。”(p219)

と、本の結びで読者への警鐘を鳴らし、百田尚樹さんの本らしく「よく調べたなぁ〜」という裏付けをもとに、

平和であり続けるために必要な心構えに成すべきことが述べられています。

先人たちの思い、継ぎ行くべきこと

夏から『失敗の本質』、

<< 2017年9月1日投稿:画像は記事にリンク >> 日本軍の失敗を現代の文脈に生かす狙いで上梓され話題沸騰の『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』読了

先月は『組織の不条理』と。

<< 2017年10月8日投稿:画像は記事にリンク >> 菊澤研宗さんが『失敗の本質』とは異なる切り口で迫った大東亜戦争の深層:『組織の不条理 日本軍の失敗に学ぶ』読了

短期間で大東亜戦争に関わる書籍を読みましたが、上記二冊とは異なるアングルに、ミクロな視点。

更には百田尚樹さんの強烈なまでのメッセージが伝わってきて、特に最終章の「護憲派に告ぐ」は重く受け止めざる得ない説得力でした。

このところ先の衆議院議員選挙の時をピークとして、右に左に、或いは保守であったりリベラルであったり・・

考え方あるいは立場というのか、人それぞれの違いに焦点を当てられがちですが、

多くの日本人に共通する思い、次の世代へ託していきたいもの。守りたいものなどが、百田尚樹さんの言葉で重みを伴って表現されており、深く考えされられる一冊でした。

 


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