グローバルな政治リスク分析・コンサルティング分野をリードするユーラシア・グループを率いるイアン・ブレマーの
257ページ(+謝辞、解説)に及ぶ分量とともに、内容の専門性も高く、読了までパワーを要しましたが、
理解が不十分であった箇所などは、巻末の慶應義塾大学 神保謙准教授「解説」で、補足が出来るものと思います。
世界の中のアメリカ、日米関係のアメリカ
読了に至る過程でポイントと捉えた箇所を抜粋すると・・
まず、国際社会の在るべき姿、そしてアメリカの果たす役割について
” 現代の脅威は、各地の株式市場を駆け抜け、サイバー空間を疾走し、スーツケース1つに詰め込まれて国境を越えてくる。
他者が平和に暮らせないうちは、我々も安心できない。我々が作る製品を買うことのできる中間層が他の国でも生まれない限り、我々の繁栄も続かない。
強く、安定した同盟国やパートナーが必要だ。貧しい国には、統治しきれていない地域がテロリストや犯罪者にとっての安全な聖域とならぬよう阻止してもらわなければならない。
要するにはアメリカ人は、民主主義、法の支配、情報へのアクセス、そして人権が普遍的に承認され、保護される世界においてしか安全だと言えないのだ。
なぜならこうした価値観を確立し、保護される社会にこそ、持続力、しなやかな活力、安全、そして富がもたらされるからだ。
こうした価値観を世界全体にわたって推進し、保護することができるのはアメリカだけだ。”(p163-164)
更に、
” 21世紀のアメリカは何を目標とすべきなのだろうか。我々は、「世界のすべての国が民主主義国になる」ために創造的に、根気よく、賢明に行動しないといけない。
すべての国が国家の安定だけでなく個人の権利をも守る法に基づいて統治され、すべての国が宗教、言論、集会および報道の自由を確立し、守らなければならない。
さらに、貿易や投資が国際ルールに基づいて運営される経済システムを形成していくのだ。そうすべき理由は、自由こそがすべての人間の権利だからだ。”(p166)
日本にリンクする部分では
” 仲裁役のアメリカ軍抜きで共存していくことをアジアの大国が学ぶべきだと判断すれば、アメリカ政府はそのことを日本に対してはっきり示し、
まったく新しい態勢に移行するための時間的余裕を日本に与えないといけない。
もしアメリカ政府が、自国の安全保障に責任を持つことを日本政府に期待するのであれば、身銭を切って必要な防衛力を身につけ、
将来の日中関係を再考する必要があることを日本の有権者にはっきり理解させるのだ。
もし日本のリーダーたちが他に道はないということを日本の有権者に納得させるのであれば、アメリカの計画があいまいであってはならない。”(p230)
アメリカの内憂外患
本書を読んでいるうち、「アメリカ・ファースト」のスローガンを掲げて大統領選を制したドナルド・トランプ大統領誕生の必然性を感じましたが、
アメリカ人から見たアメリカが果たすべき役割は、日本人が(特に有事で)期待するアメリカとは異なり、
いろいろ緊迫している周辺事態に対して、考えさせられるところ多き一冊でした。