プロ野球(NPB)福岡ダイエーホークス、千葉ロッテマリーンズ、その間MLBでシカゴ・ホワイトソックスなどで世界一を経験された井口資仁さんの『井口ビジョン』を読了。
サイン本入荷情報に反応して入手した著書。
本書のタイトルに掲げられたビジョンとは、
” ビジネスにおける「ビジョン」の意味を聞いた後、僕の耳には違和感なくスッとなじんだことを覚えています。
振り返ってみると、僕は「ビジョン」という言葉こそまだ使っていませんでしたが、子供の頃から自分の目指すべき未来像をしっかりと決め、そこに至るまでの過程を逆算し、今取り組むべきことを明らかにするという作業を繰り返してきていました。”(p5)
と井口資仁さんのキャリアを支えたキーワード。本編では
” 2歳上の兄はスポーツより勉強が得意なタイプで、中学受験をして中高一貫校へ進学。僕も成績は良かったものの、よく母から「お兄ちゃんかみたいに勉強も頑張って」とハッパを掛けられました。
学習塾に通っていたので中学受験を考えましたが、受験をするとなると野球の練習には参加できない。中学受験をするか、野球を続けるか、その選択を迫られた時、僕はプロ野球選手になる道に本気で取り組むことを選んだのです。”(p19)
と若くして決意したプロ入りへの覚悟に、プロ入り(福岡ダイエーホークス入団/現福岡ソフトバンクホークス)後、
” シーズン終了も押し迫った9月のある日、冴えない表情の僕を見た島田さんから声を掛けられました。「お前が松中や柴原を抜くには、何が一番早いか分かるか?」それが分かれば悩みはしません。返答に窮する僕には島田さんは「タイトルだよ。タイトルを獲ればいい。アイツらはまだ獲っていないんだから」と言うのです。”(p55)
と(当時)島田誠 外野守備・走塁コーチから掛けられた言葉からチームでの居場所を掴むためにまず目指した盗塁王がプロでの突破口となった転換点に、
” こうして迷った時こそ、原点回帰です。高校、大学、プロ野球、日本球界復帰という人生における重要な帰路に立った時、僕は自分たちの手で未来を切り拓き、作り上げる楽しさを感じられる環境を選択してきました。
今、目の前にあるロッテというチームは、大鉈を振るい、ゼロから作り直す必要に迫られているのです。自分たちの手で描ける未来があるのです。心は決まりました。”(p89)
現役選手引退直後に受諾した千葉ロッテマリーンズ監督就任の経緯に、チーム改革へ向け取り組んだ具体的なことの数々に、井口資仁さんの半生に沿った形で綴られています。
言及された内容には2試合連続パーフェクトの偉業がかかっていた佐々木朗希投手降板の真相(p152〜)についても含まれていたり、
” 実際は試合に100%の状態で臨めることはまずないですし、打席できれいなヒットを打てることも稀。調子がイマイチであったとしても、その中でしぶとく内野安打を掴み取れば、それもまた成功なのです。”(p128)
と井口資仁さんほどのキャリアとは裏腹な野球で視るべき現実に、読みどころ点在。
私個人にとって井口資仁さんといえば、シカゴ・ホワイトソックス在籍時、首位争いを繰り広げていたクリーブランド・インディアンス戦を現地観戦をして、ゲーム終盤の痺れる場面でタイムリーヒットを放ち日本人として誇らしい気持ちにさせてくれた思い出のプレーヤーですが、
従前描いていたスマートなイメージ損なわれることなく、本書を通じ目標を着実に現実化させた(イメージの)内側に迫れた思いで、興味深く読み進めていくことが出来ました。