感性アナリストなどのお立場でご活躍されている黒川伊保子さんの『英雄の書』の読了記 第4弾。
今回は「第3章 自尊心の章」から、文字通り「自尊心」に関して。
ゆるせない、に始まる自尊心のレシピ
” きみには、ゆるせないことがあるだろうか。友がそれをしたとき、友情をかけて友をいさめるほど、ゆるせない何か。
自尊心は、ゆるがない自我を自覚する感覚だ。自分がここにいて、これをすることに深い意味があると感じる気持ち。
生きる方向性を決める大事なセンスである。自尊心がなければ、人は、ことを成しえない。
自尊心があるから、人は、他人の横やりに爽やかにNOが言えるし、過酷な作業にも耐えられる。
しかし、この自尊心、ただ「持て」と言われても、きょとんとしてしまう人も多いのではないだろうか。
・・中略・・
スティーブ・ジョブズは、「醜いコンピュータ」をゆるせなかった。
1955年生まれのジョブズが、1997年、20歳そこそこの若さで生み出したのが、伝説の一体型コンピュータ「アップル II」。
このコンピュータが、「パーソナルコンピュータ」いわゆる「パソコン」ということばを生んだのである。
それまでのコンピュータは、処理ブロックごとにいくつかの箱に分かれており、醜い配線がそれをつないでいた。
大きくて大仰で、もちろんパーソナル・ユースなんて考えられもしなかった。
・・中略・・
ジョブズが「こんな醜い箱を、自分の部屋に置くのはゆるさない。
どうしても使えと言うのなら、美しい文房具としてのコンピュータを、僕が作ってみせる」と豪語したという(中略)
そのセリフがそのまま本当かどうかは知らないが、「ゆるせない」という気持ちが、伝説についてきたことだけでも、脳科学的に興味深い。
大きな流れ、つまり人々が「常識」だと思い込んでいたことをひっくり返す伝説には、その伝説を生んだ英雄たちの「ゆるせない」が寄り添う。
そこには、美しい自尊心が姿を顕わすからだろう。”(p94-98)
自尊心の正体
” たとえば、「弱音を吐くことは、ゆるせない」と決めたとしよう。なのに、弱音を吐いてしまったとき、きみの中で傷つくものがあったら、それが自尊心だ。
弱音を吐かないで生きれば、その年月が自信になり、自尊心が確固たるものとなる。
やがて、同じように生きようとする他者が愛おしくなり、その人たちを守ろうとする覚悟が生まれる。それこそが、英雄が生まれる瞬間である。
・・中略・・
英雄とは勝った者に与えられる称号じゃない。何かをゆるさないために、誰かを守るために、孤高を怖れない者に与えられる称号なのである。
・・中略・・
ゆるせないと決めたことが、やがて自信を生み、自尊心をつれてくる。そうして、他者を守ってあげたいという使命感をつれてくる。
本当の強さとは自尊心にあり、本当の優しさとは使命感にあるのじゃないだろうか。
相手が欲しがりそうな優しいことばを垂れ流すことなんかじゃなく。
・・中略・・
「ゆるせない」ことを「貫く」ことは、脳にとって大事なのである。それができる脳の持ち主にしか、伝説は創れない。”(p99-101)
この内容を受けて、世間の捉え方、交わり方についての興味深い指摘があり、章の締めで
” 脳科学の立場から言えば、挫折する者ほど、才能がある。
人生の迷子になったからと言って、自分に不信感を抱くことはない。むしろ、そのことを自尊心の核にしたらいい。
きみの人生は、きみのものだ。きみ以外のすべては、脇役。そう考えたら、きみを傷つけるものなんて何もない。”(p110)
との黒川伊保子さん読者へエールが贈られています。
踏み出すべき一歩を脳科学の見地から
「自尊心の章」のあと、本は「使命感の章」「餞の章」と続きます。
と、3週(全4回)に渡って取り上げてきた『英雄の書』ですが、脳科学というバックグラウンド(裏付け)をもとに
知らないと、ちょっと怖くて一歩踏み出せなど、踏み出す、踏み出さないで、その後の人生が大きく違うといった
人生で大事なことが、コンパクトに5章立てで説明されているので、転機を求めている方に、そこに既に差し掛かっているという方など
もともとは新社会向けに書かれてある一冊ですが、本来は幅広い読者層のハートに響く一冊であると思います。オススメ!