プロレス界が輩出したレジェンド アントニオ猪木さんの『猪木力 不滅の闘魂』を読了。
本書は、
第1章 プロレスは哲学だ
第2章 興行師アントニオ猪木
第3章 闘魂の記憶
第4章 闘う男たちに花を
第5章 闘魂の遺伝子 ー 師弟対談 アントニオ猪木x前田日明
第6章 元妻、娘、息子へのメッセージ
第7章 妻・田鶴子の愛と生きる重み
第8章 コロナ時代の「元気」
第9章 命が輝く時
の章立てに沿って構成され、
” 思えば、あの朝露を踏んだ感触が俺にとって俺にとって「アントニオ猪木」になる「道」の第一歩だった。”(p18)
と、十四歳で家族でブラジルに移住した時の頃の振り返りから
” 今はこの「水プラズマ」を使った廃棄物処理を世界規模で普及させることに燃えている。”(p240)
と直近の状況(二〇二〇年九月出版)に至るまで綴られた自伝と言える内容となっています。
アントニオ猪木たる由縁
全249ページ(別途、<アントニオ猪木 年譜>)、常人の何倍もの人生を生きたであろうアントニオ猪木さんの部分的な振り返りに過ぎないでしょうが、
” 一番、培われたのは、リングに上がった以上、人を喜ばせたいという精神だった。
世界進出とかベルトとかチャンピオンとか最強の男とか、いろんな目標があったんだけど、でもそういうものは二の次で、とにかく理屈抜きで、どんな時でもどうやったらすべての客を喜ばせることができるかを考えていた。”(p25)
というプロフェッショナリズムに、前田日明さんとの師弟会談で披露された
” 変な試合をすると「何やっているんだ!」と猪木さんがプッシュアップで使う木製のバーを持ってきて、リング上で対戦している二人ともボコボコにして顔が腫れて、控室戻ってきたら大会が終わるまでスクワットをやらせていたんですよ。”(p159)
と弟子たちに求めた厳しさに、
猪木イズムというのか、本書のタイトルに掲げられた「猪木力」の源泉に端的に触れられる著書で、熱かった時代の断片を共有したものの一人として興味深い記述が点在していました。
アントニオ猪木が燃えた時代
アントニオ猪木さんといえば、近年、体調不良が伝えられていて、
” 俺は今、心アミロイドーシスという病気を患っている。これは、日本国内で百万人に数人がかかる病で厚生労働省が難病に指定している。”(p234)
と重い現実にも本書では言及されています。
亡き家族への思い等、後半全般的に晩年を迎えている記載は気がかりでもありますが、その一方
” 肩書きなんか一切興味がない。そんなもんより、どれだけ年を重ねても挑戦する生きざま、その背中をしっかり見せたい。”(p243)
と、それでもなお生きざまを感じさせられる思いも伝わり、時の流れは意識せざるを得ないところですが、
生きているうちから既に伝説の領域に足を踏み入れたアントニオ猪木さんが辿ってきた足跡を駆け足的に振り返ることの出来る、読み応えある自伝です。