板倉雄一郎さんの著書『社長失格の幸福論』を読了。
板倉さんの紹介がある時に、名前の前に(著書の中での)代表作といえる『社長失格』が来ることが多いものと思いますが、
本書を手に取ったのは先日開催された板倉さんが登壇される「サバイバル投資セミナー」に参加する事にして
それなら「家にある『社長失格』にサインしてもらおう」と、読了本が積まれたゾーン内をガサガサと探すも
探せど探せと見つからず・・、結果として出てきたのが
本書ともう一冊。当日予定通り、セミナー終了後に板倉さんに本書を差し出した際、
「(ご自身の著書の中で)一番好きな本だ」と言われ、「どんな内容だったかな・・」と、再び本の中を開いてみる事に。
失敗に価値が見出された人生
買った時のレシートを見れば、2003年・・。結果的に最初この本を読んだ(であろう)時を思い出せませんでしたが
10年以上の時の経過があれば、致し方ないでしょうかね。
内容は『社長失格』上梓後の生活、そこに端を発した予想外の展開:印税及び著書に基づく講演会などを軸とした
再起を遂げられていく様子、その中での心の動きが綴られており、幾つが印象的な件(くだり)があったので下記に留めます。
再起に至るプロセスでモノローグされた板倉語録
” 卓抜なアイデアを思いついた人の話を聞くと、ほとんどの場合、入念なマーケティングのもとに理論的に打ち出されたものではなく、瞬間的に脳裏をかすめるものであるという。”(p24)
” 僕(板倉雄一郎)が自らのアイデアを少なくとも事業としてスタートアップできたのは、なぜだろう。たぶん、不可能である理由を数え上げたからではなく、可能である唯一の方法を捜し求めたからにちがいない。”(p32)
“「失敗は、人に多くを学ばせる」このときのこの感覚が、このあとの僕のビジネスの中心になっていく。あらゆるものを失ったように思っていた僕には、時間の他に「経験」という資産が残っていたのである。”(p46)
” 僕は、年間数十回の講演でも「失敗と成功」について必ず語っている。なかでも米国の投資家は「過去に傷を持っていない人」=「何も始めたことのない人」と評価し、逆に「過去に失敗の経験がある人」=「歩こうとした人」と評価することをつねに強調している。つまり、失敗か成功かよりチャレンジした否かに、投資するべき対象としての高い評価を与えるという理屈である。”(p89)
” 人や社会が、ある人を評価するとき、失敗者か成功者かではなく、「今日現在、どこを目指して、どのように活動しているのか」に最大の興味と評価を与えるということだ。”(p120)
” 「やめること」と「待つこと」は、僕にとって最大の試練であり、経営においてはたぶん、最も語られないが、最も重要な判断ではないだろうか。度重なる失敗を繰り返すのは、自らに根本的な問題がある。だから自分が一番不得意とされることにチャレンジしようというわけである。”(p134)
” 多くの人は「良い結果」のために今日を費やす。「明日」のために「今日」を消費する。しかし、明確な目標を描いた結果が、今日を消費することによって得られたとしても、それを味わうのはほんの一瞬だ。
オリンピック選手が「金メダル」を取るためだけにすべての「今日」を消費していたら、それを手に入れたとき「金メダル」しか残らない。そして途方にくれる。
けれども「金メダル」を求めること自体(プロセス)を楽しんでいたのなら、仮に「金メダル」を手に入れようが(成功)入れなかろうが(失敗)、彼はそれまでのプロセスという幸せを味わうことができたわけだ。結果がどうであれ、その後も幸せを掴む(感じる)人生を歩んでいけるだろう。”(p138)
” 何かにチャレンジする・・・チャレンジする以上そこにはリスクが必ず存在する。だから怖い。怖いからなかなか始められない。実はこんな単純なことが「始められない人」の心理だろう。そして絶対に失敗しない条件が揃うのを待つ。しかし絶対に失敗しない状況など作れるはずがない。未来は揺れ動くし、足元の条件はつねに変化する。
怖さを打ち消す方法は、絶対に失敗しない二重三重のビジネスプランを作ることではない。失敗の可能性から目をそむけ、成功だけを信じることでもない。失敗したときをリアリティを持って想像し、その時を受け入れることができるか否かを自分に問うてみる。そんな自然な態度が、漠然とした失敗の怖さを消し去り、チャレンジに邁進するために必要な準備だろう。”(p211)
リセットされた人生から見出された生きる目的
多額の借金を抱え、自己破産でそれまでの過去を精算し、一冊の本(『社長失格』)をもとに再びビジネス戦線に身を投じる中での
心の葛藤が描かれた一冊といえますが、その過程で得られた一つの結論・・
” 結果を追う人生、明日のために今日をもう消費する人生はもういい。今、僕は何をしたくて、今僕は何をしたくて、今僕が何を楽しいと思うのか?そう、僕がしたいことは、したいことをする人生だ。”(p216)
この一文に、本書のタイトルにリンクする板倉雄一郎さんの幸福論が記されていて、読者へ向けたメッセージになっていると読み解きました。