サイン本入荷情報に反応し、
入手していた著書。
本書は、
島脱け
夢でありんす
放召人討ち
の3話を収録。
「島脱け」は、一代限りの武家奉公人が主人に見込まれ行った闇仕事から
” 政恒が語るところによると、安永六年(一七七七)田沼意次に連なる勘定奉行の石谷清昌は、江戸市中に流入した無宿者の処置に困っていた。そこで片っ端から無宿人を捕らえて佐渡に送り込む計画をぶち上げた。”(p11)
激務を課される佐渡送りの憂き目に遭い、繰り広げられる決死の脱出劇。
「夢でありんす」は、
” 吉原は「粋」と「張り」の街だ。「粋」はどんな時でも慌てず、余裕を見せること。「張り」とは心意気のことで、吉原に生きる女も男も、「粋」と「張り」を何よりも大切にしていた。”(p100)
にして、
” 吉原の外に出ることができた者も少しはいるが、ただの一人も逃げきった者はいない。”(p101)
という遊郭吉原舞台のミステリーからファンタジーがかった結末を見せる逃亡劇。
「旅召人討ち」は
” 旅召人とは領内で重罪を犯した者を放逐する制度で、慈悲深い三代藩主義処が、殺人を犯さない限り、罪人を放逐で済ませることから始まった。
藩の記録には「国の規犯したる者、この峠を越して追いやらうことあり」とある。規とは規制のこと、この峠とは仙台藩との国境となる十里峠のことだ。追放された者は久保田藩領に戻ってこない限り、罰せられなかった。
義格は、この旅召人を武芸振興の手段に使うことを思いついた。つまり旅召人を獲物として、藩主たちに狩らせるのだ。”(p172-173)
なる悪事で因縁を持つ者が放逐された側と狩る側に分かれ山中など過酷な状況から導かれていく結末は・・ といった逃亡劇三話。
それぞれ緊迫した状況から、救いにホロっとさせられる読後感に導かれ、中でも「夢でありんす」は
” ちなみに呼出とは。太夫の後を受けて作られた最上位の女郎で、三千人いる女郎の中で二十から三十人しかいなかった。その下には、昼三、付廻、座敷持、部屋持、切見世と明確に格付けが決まっていた。花魁と呼ばれるのは座敷持以上になる。”(p102)
といった吉原の小史に、(既述の)生きた人たちの心意気なども伏線となり、土地柄は承知しておるも実情はよく知らずといったところから学びも得るなど最も読み応えを実感出来ました。