伊東潤さんが描いた日野富子の「世に静謐をもたらす」ために生きた生涯:『天下を買った女』読了

作家 伊東潤さんが、日野富子の生涯に焦点を当てた『天下を買った女』を読了。

都内で販売されたサイン本を油断し買い損ねてしまっていたところ、地方でのサイン本販売情報が目にとまり

大阪往訪時にサイン本を死守 ^^

タイミング良く予定していた大阪行きに合わせ、入手叶えていた経緯。

伊東潤さんの本は、本編前に登場人物一覧が載せられており、

【登場人物一覧】

「今回多いなぁ」と、出だしはスロースタートな感じでしたが、100ページ越えたあたり、

室町幕府八代将軍足利義政との間に三人の子をなすも女の子が続いていた妻 日野富子が、

” 寛正六年(一四六五年)十一月、富子が無事に男子を産んだ。甲高い泣き声と共に産まれた元気な男の子だった。

ー 遂に男の子を得たのだ。”(p120)

というあたりから、男の子が産まれない事態に、

” 「わしの楽しみだけは続けさせてもらうのが、将軍職を譲る条件だ。今出川も『それで構いません』と申していた。つまりわしは、将軍としてのめんどうな仕事や儀式から解放され、好きなことだけして過ごせるのだ」”(p94)

と、弟 足利義視に将軍職移譲の話しを進めていた状況が交差するあたりからストーリーに惹き込まれていく力が強くなり、

” 「何事も私の言う通りにしていれば、道は開けます」”(p126)

と権力者としては頼りない足利義政に変わり、覚悟を決め

” 「はい。何事も先立つものは富です。私のような女人は無力ですが、財力さえあれば殿方とも伍していけます」”(p198)

と経済の力を理解、駆使しながら

” 確かに室町幕府は、何事にも及び腰の義政という将軍を持ったばかりに、凋落の一途をたどっている。”(p381)

という流れに抗えずも

” 静謐のために闘い抜いた証しでもあった。”(p401)

と、戦国時代突入前、権力への欲望が剥き出しになりながら、女性の枠を超越し強く生きようとした生涯が描かれています。

悪女の向こう側で貫かれた生きざま

日野富子というと、辿った生涯を知らずとも悪女との刷り込みは頭に入っていましたが、

“「世に静謐をもたらす」ために生きた富子の生涯は色あせることなく、逆に輝きを増し、後々まで語り継がれていくことになる。”(p404)

購入本に書かれていたサイン&「天下静謐」の落款

との一文で締め括られる本書を読むと従前のイメージを刷新され、今もその名が語り継がれる状況に、覚悟を決めて生きざまを貫いた見事さを感じさせられました。


Comments

comments