経済評論家 上念司さんの『経済で読み解く日本史(大正・昭和時代)』を読了。
五巻シリーズの三巻目で、移動時間があったことから、これまでと異なり、中間記を一旦アップロードせず、一気に読了に至りましたが、
本書は、
序章 【経済と戦争の相関】経済がわかれば、「戦争」がわかる!
第1章 【第一次世界大戦までの世界経済の動向】「金本位制」が世界経済を成長させ、そして、奈落に突き落とした
第2章 【第一次世界大戦の明暗】凋落するドイツとフランス、台頭するアメリカと日本
第3章 【第二次世界大戦前後の日本経済】日本はなぜ大東亜戦争に突入したか
第4章 【日本の戦後復興 その1】焼け野原から「高度経済成長」を成し遂げた奇跡の国・日本
第5章 【日本の戦後復興 その2】最悪の年を乗り越えバブル景気へ
と章立て。
歴史を動かしてきた経済政策・・
今回は第2章までの中から印象に残ったところを拾うと・・
” モノとお金のバランスがお金不足によって崩れることで、デフレが起こります。現代の日本には「人口が減ったからデフレになった」とか、
「支那からの安い製品が入ってきてデフレになった」といったウソが未だにまかり通っていますが、騙されないでください。
デフレとは「お金不足で発生する貨幣現象」です。
日本が金本位制に復帰したのは1930年ですが、第一次大戦の休戦以降、「いつか日本は金本位制に復帰するに違いない」という期待が国内外にありました。
そのため、当時対外債務が多かった日本政府も、「永久に金本位制から離脱する」などと宣言することはできなかったのです。”(p26)
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” 経済的な停滞をどうすることもできない政府に失望した人々は、「五・一五事件」(1932[昭和7]年)や「二・二六事件(1936[昭和11)年)」といった軍事クーデターにさえシンパシーを感じ、首謀者の助命嘆願運動まで起こってしまいました、”(p28)
或いは
” 第一次大戦の後しつこく続いていた「不況」です。経済的な困窮は人々の精神を病みます。
普通の精神状態なら見向きもされない危険な思想も、不安を抱えた人々からは究極の救済策として積極的に受け入れられてしまうのです。
読者がむしろ危険思想を求めているなら、マスコミは喜んでそれを提供します。
日露戦争の時に「講話反対!」を叫んでいたころと全く変わりません。売れれば何でもいいのです。
結局、経済的な困窮による人々の心の乱れと、その乱れに乗じて販売部数を伸ばそうとする商業マスコミが、相互に煽り合って国全体がアブナイ考えに染まっていきます。”(p130)
という具合で、経済政策の適切な舵取りが誤られてしまうと、(支払うべき)対価が余りに大きくなり、
逆の見方からすると、大事件の背後には当時の経済状況が密接に絡み合っているということ。
歴史が示す現実
本書の「まえがき」に
” 本シリーズの一貫したテーマは「人々は経済的に困窮すると、ヤケを起こして、普段は見向きもされない過激思想に救済を求める」というものです。”(p6)
とあり、結びの「あとがき」には
” 日本経済の歴史を振り返るにつけ、なぜ正しい政策が実行されないのか本当にもどかしく思います。いい加減に日本人は過去の歴史に学んだ方がいい。”(p274)
とストレートなメッセージが載せられ、闇の深さに学ぶべきを痛感させられます。