一旦、中断していた経済評論家 上念司さんの
『経済で読み解く日本史』シリーズの読み進めを再開し、
四冊目となる『経済で読み解く日本史(室町・戦国時代)』を読み始めてから
第一部 中世の「金融政策」と「景気」
第1章 明の景気が日本経済を左右した時代
第2章 室町幕府の知られざる財政事情
第二部 謎解き寺社勢力
第3章 日本経済を牛耳る巨大マフィア
第4章 京都五山のビジネスと本願寺の苦難
第三部 武将と僧侶の仁義なき戦い
第5章 信長の先駆者たち
第6章 吹き荒れる宗教戦争の嵐
第7章 信長の台頭と室町幕府の終焉
と目次立てされているうちの第二部(第4章)まで読み終えたので、そこまでのおさらい。
時代は移ろえど不変の経済の掟
本編が始まる前の 「序に代えて 〜お金の流れがわかれば「歴史」がわかる に」
” 経済で歴史を読み解くという作業は、歴史上の出来事を「経済の掟」という観点から観察する作業です。
それはある一面では、「時の権力者がいかにして経済の掟と格闘したか」を観察し、
「その政策が日々生きるために商売をしている名もなき民にどのような影響を与えたのか」を確認する作業とも言えます。”(p3-4)
五巻シリーズの第一巻に相当することもあり、シリーズの大前提に、
” どんなに強い政治権力を持つ者でも絶対に逆らえない掟があります。それが「経済の掟」です。
それは、例えば「お金をたくさん刷れば必ずインフレが起こる」とか、「お金の量が減ればデフレになる」とか、
「デフレになるときは自国通貨高になる」といった、とても単純なルールです。”(p3)
或いは
” 景気をよくするためには、借金をしてまで商売をするようなリスク選好的な人をサポートしなければなりません。
なぜなら、商売は何が正解かわかりませんから人々がたくさんチャレンジして、生き残ったものを暫定的な正解とするしかないからです。
淘汰によって生き残ったアイデアこそがイノベーションであり、それが劇的な生産性向上をもたらします。
こうすることでしか一国の経済は発展しません。しかし、それを進めていくためには貨幣価値の安定が不可欠です。”(p5-6)
といった根源的なことが書かれており、
読む前に要点が整理されていることは、その後の流れを理解していくのに大いなる助けとなり。
狂大なる寺社勢力
そのような中、展開されていく時代は
” 室町時代は全体的にデフレ圧力が強く、経済的に困窮していたからこそ、戦争で一発逆転を狙う人が後を絶たなかったと言えます。”(p8)
という大づかみに、更に
” 寺社勢力とは単なる宗教団体ではありません。寺社は仏教留学僧が作った支部とのコネクションを生かして貿易業に精を出す巨大商社であり、
広大な荘園を所有する不動産オーナーであり、土倉や酒屋といった町の金融業者に資金を供給する中央銀行でした。
中でも比叡山延暦寺(天台宗)のパワーは最強であり、暴力団で言うなら山口組、大学で言うなら東大法学部、不動産会社で言うなら住友不動産・・・。
いやこれらをすべて合わせたよりも大きな力を持っていました。”(p88)
という特殊性から
” 比叡山をはじめとする旧仏教勢力から主導権を奪った五山は彼らと同じビジネスモデルを展開しました。
前章の冒頭で説明した交易、荘園経営などがそれに当たりますが、彼らが旧仏教勢力から奪った利権はこれだけではありません。
土倉、酒屋といった金融業も五山の系列寺院の門前町で派手に展開しました。”(p126)
発展した利権争いに・・
織田信長の経済嗅覚
目次を読むに、後半に進むに従って「(織田)信長」の存在感が際立ってくる感ですが、
信長に関して「序に代えて」 で
” 目端の利いた天才は何となく経済の掟を肌で感じ、世の中の枠組みを変えようとしました。
経済の掟に逆らうのではなく、むしろそれを利用して富を拡大させていくことを図ったのです。
その目端の利いた天才のひとりに織田信長がいました。間違いなく信長は掟を「ある程度」は理解し、それに沿った政策を実施しています。”(p4)
との一文があり、
本巻のハイライトになるのであろうと、その辺りを意識しつつ中、後半と進んでいきたく思います。