門田隆将さんが迫った、スポーツ史に刻まれたドラマの舞台裏:『あの一瞬 アスリートが奇跡を起こす「時」』読了

ノンフィクション中心に多数の著書を上梓されている門田隆将さんの

『あの一瞬   アスリートが奇跡を起こす「時」』を読了。

本書は

 第一部 オリンピックという魔物

 第一章 ピークをどこに 最強ランナー「瀬古利彦」はなぜ敗れたのか

 第二章 志は国境を越えて 女子ソフト「悲願の金」をもたらした女の輪廻

 第三章 失敗する練習 極限の緊張を凌駕した「加藤次男」の大逆転劇

 第四章 勝機はその一瞬だけ 山下泰裕を揺るがせた「遠藤純男」の執念

 第五章 すべてはチームのために サッカー日本代表はなぜ「銅」を獲得できたのか

第二部 アスリートの原風景

 第六章 過酷な減量の末に 「ファイティング原田」が演じた世紀の番狂わせ

 第七章 居場所を求めて 日米野球の因縁と「怪物スタルヒン」の涙

 第八章 「王者」たるゆえん 「新日鉄釜石vs同志社」史上最強激突の意地

 第九章 素朴さに触れて 大鵬・柏戸「昭和最高の決戦」秘話

 第十章 全力で「分力」を叩く 明徳義塾ナインが「松井五敬遠」で見た風景

の十章立てで、門田隆将さんが

” 本書を読んで、人生に必ず訪れる挫折や障害に対して、くよくよするのではなく、むしろ新たに挑戦ができる喜びと、その大切さを少しでお感じとってもらえれば、と願う。

アスリートはなぜ「奇跡」を起こすのか。

本書のテーマであるその「奇跡」とは、実は、日常の私たちの周辺のそこここに存在しているものである。”(p366)

との視点から当事者及び周辺の取材をもとに十の奇跡が生まれた舞台裏について綴られています。

かくして奇跡/事件は起こった

前半(第一部)は、馴染みの薄いオリンピックが舞台で、

” 過去五年間に出場したマラソンで五選全勝。並みいる世界の強豪が揃った大会で必ずトップでゴールテープを切ってきた瀬古は、「最強ランナー」「不敗の男」として、ロス五輪で優勝候補の最右翼と目されていた。”(p21)

と、「そういえば、そうだったなぁ」と圧倒的な金メダル候補でありながら、

” ロサンゼルス五輪はすでに開幕している。

「なぜここで・・・」「終わった。すべてが終わった」

瀬古は何度も反芻していた。”(p18)

「実はそういうことだったのかぁ」という新事実が明るみにされたり、

後半(第二部)では、

” しかし、大鵬はこの相撲がきっかけで柏戸と真の友人になることができた、と思っている。

「場所が終わって数日後、柏戸さんとたまたま二人だけで一緒に車に乗る機会があった。

その時、いろいろ辛かったね、おめでとう、と言ったら、柏戸さんは、う、う、うん、と言ってボロボロ涙を流したんです。」”(p307)

と、この辺は追体験となりますが、相撲史に残るライヴァル関係の真実に、

一スポーツファンとしての魅力再発見に、なぜ自分が長くスポーツに惹かれてきたのかを再認識する機会にも繋がりました。


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