週中に中間記⬇︎をアップロードした
『黙示録 ー 映画プロデューサー・奥山和由の天国と地獄』を読了。
松竹解任に至る光と陰
奥山和由さんご自身による「おわりに」まで全412頁に及ぶページ数もさることながら
書かれている内容の方も濃密で、
” ここから地獄が始まるわけです。『3-4x』の結果の余波が、書類上だけのことで言えば、映画部門はどんどん赤字を積み上げている。
責任どうしてくれる、みたいな話にどんどんなっていく。もとをただせば『3-4x』が一番ひどい数字ということも事実だったりする。
「お前の趣味でやってるんじゃないぞ。たけしと映画やるんだったら松竹を出ていけ」みたいなことを言われながら、追い詰められ始めていたわけです。”註『3-4×10月』:(p203)
と、もともとは
” 本当に『ダイ・ハード』やるつもりですか?『ダイ・ハード』やると金かかるけど」「いや、娯楽映画を本気でやろうと思ったら、自分は全然違う方法でやれると思うんですよ」と言って。
それで「この人がやれると言うならやれるかな」と思っちゃって。”(p200)
と奥山和由さんと北野武監督のやり取りから製作が始まった『ソナチネ』が完成してみたらアート映画になって・・
というところから裂け始めていた溝が決定的になっていった奥山和由さんと松竹の関係がやがては
” 一九九八年一月一九日、松竹の奥山融社長と和由専務は役員会によって解任を決議される。
「独断専横」がその理由だった。時代の寵児だったはずの奥山和由はアッという間に引きずりおろされ、そしてマスコミの大バッシングに晒されることになる。”(p360)
と周知知る局面を迎えることに。
本書が素晴らしいのは私を含む多くの映画ファンにとっては、ここで奥山和由さんとの関係が断ち切られていたと思うところ
奥山和由さんの言葉で、しっかり名誉回復がなされている点。
近くて遠いロバート・デニーロ
また、読みどころとしては
“「自分は自分の直感を信じている。独特の映画人であるあなたと長い時間をかけて友情を積み上げ、仕事を一緒にするという将来を目指したい」”(p316)
とのラブコールを(奥山和由さんに送った)Robert DeNiro:ロバート・デニーロとの個人的な交流。
個人的としたのは、件の松竹解任劇で製作資金をプールしていたファンドを解散させられ、実現に至っていないため。
ほんの一部?!凄まじき熱量の裏側での・・
と、引用はごく一部で分厚い一冊を時間をかけて(興味深く)読書しましたが、
最後、奥山和由さんの「おわりに」で
” 最後に言い残したこと?いや、プロデュースした映画は一〇〇本以上になるので、そりゃほんの一部しかお話ししてないように思いますよ。”(p409)
と、これだけ書いてあっても「ほんの一部なのかぁ」と ^〜^;A
そういえば、(上述の)刊行記念トークイベント時、「本当に喋ろうと思ったら10時間くらいかかる」といったお話しがあったことを思い出し、「それ、是非実現して欲しいなぁ」と ^^
樹木希林さんが、奥山和由さんを評して
“「ところで奥山さん、あなたはお金の匂い、全くしないよね」”(p397)
と、この一言が、本書で描かれている奥山和由さんを良くも悪くも言い得ていると思いますが、
日本の映画界に危機感を覚え、立ち上がり、立ち向かっていた一人の映画人の奮闘記、熱い気持ちに読後包まれました〜