先週、中間記を ↓
アップロードした作家 川上未映子さんの『夏物語』を先月(2021年10月)末読了。
中間記を書いている頃には、描かれている話しの筋に凄みを掴めていませんでしが、
後半に進むに従って
“「結婚して何年たっても父とのあいだに子どもができなくて、そのことで母はずうっと祖母から責められていたと。
昔からですね、いや、今でも変わらないか。でも当時は男性不妊なんて発想がまずない時代だから、子どもができないことはほとんど百パーセント女性のほうに原因があるものだって、みんな当たりまえに思っていた。”(p426)
という母から生まれた(本書)重要人物の父親を知らないことに苦悩を抱えた背景が説明され、
次第に重みが伝わるようになり、AIDで自分の子を産みたいとの考えに次第に傾倒していく主人公 夏子との間で繰り広げられる対話等を経て導き出される回答から導かれるエンディングとは・・
読後、全652ページに見合う〜それ以上の重みを覚えました。
生むこと、そして生きること
本書、裏表紙にあった
> 生命の意味をめぐる真摯な問いを切ない詩情と泣き笑いの > 筆致で描く
の部分、
“「親がわからない家族なんかごまんとあるじゃん」遊佐が言った。「わたしも父親と会ったことないよ。どこの誰かもわからない。興味もない。”(p474)
に、
” 「AIDの親だけじゃなくて、親はみんなおなじことを言うの。赤ちゃんは可愛いから。育ててみたかったから。
自分の子どもに会ってみたかったから。あとは、淋しいからだとか。老後をみてほしいからとかなんていうのもあるね。ぜんぶ根っこはおなじだもの。
ねぇ、子どもを生む人はさ、みんなほんとに自分のことしか考えないの。生まれてくる子どものことを考えないの。
子どものことを考えて、子どもを生んだ親なんて、この世界にひとりもいないんだよ。ねぇ、すごいことだと思わない?
それで、たいていの親は、自分の子どもにだけは苦しい思いをさせないように、どんな不幸からも逃れられるように願うわけでしょう。
でも、自分の子どもがぜったいに苦しまずにすむ唯一の方法っていうのは、その子を存在させないことなんじゃないの。生まれないでいさせてあげることだったんじゃないの」”(p524-525)
といった登場人物から発せられるセリフ、問いの数々に多くの読者、考え巡らさせれること必至である点、
日本国内にとどまらず、(帯によると)40ヵ国以上で刊行されるに至った経緯も伝わってきました。