サイン本入手機会に乗じ、
手元に引き寄せていた一冊。
買ったは良いが、600ページに及ぶ大作で読み始め前の覚悟に、いざページを捲り始めてから読了に至るまで時間を要することになりましたが、
公的証明が出ないなど心許ない家庭環境、幼少期を過ごした少女が、藁をもすがる思いで頼りにした一癖二癖ある人物との回顧録といった内容。
自立を図るべくファミレスでのバイト生活で多額の貯金を積み重ねるも、自宅で保管していたがゆえ盗難で一瞬にして目標が潰えるなどの憂き目から次第に闇の世界に堕ちていき、袖触れ合った似たような境遇でもがく人たちと協働したり、足並みが乱れたりする中で、ストーリーが進行。
濃厚にして、揺れ動く感情の軌跡
川上未映子さんの著書は一昨年秋(2021年10〜11月)に読んだ
『夏の物語』以来。
本作も濃厚な世界観の下、現下の生活を支え且つ切り拓くべく近未来の原資となるお金を巡って、少女を軸に揺れ動く登場人物の心の葛藤などがつぶさに描かれており、最後の一行を読み終え本を閉じる際、厚みに沿う読後感を得ることが出来ました。