作家 岸田奈美さんの『傘のさし方がわからない』を読了。
昨年(2021年)企画されたサイン企画に合わせ、年末に購入/送付した本が
2月に返送されてきていた経緯。
岸田奈美さんの著書は、昨秋以来 ↓
通算3冊目で、巧みな文章表現に魅了、期待しての購入。
100字が2,000字に膨張する日常
その筆致は
” わたしが好きなことを、100文字ですむのにあえ2000文字くらいでズガガガーッと好き勝手に書いたら、おもしろがって集まってくれる人が増えた。それでおいしいご飯も食べられるようになった。”(p218)
と、100文字ですむことが2,000文字で表現される世界、
” まず電車には盛大に乗り間違え、あろうことか円覚寺の真逆の方向へ走り出し。あわてて途中下車したら、反対ホームにつながる階段をすべり落ちて足を盛大にくじき。横田さんにお渡しするはずだったきんつばを、電車内に置き忘れたことに気づき。”(p195)
といった日常で飛び出した事件簿!?が、全編に及んでユーモラスに描かれています ^^
その中で最も共感を覚えたのは、18篇収録されているうちの「優しい人が好きだけど、人に優しくされるのがおそろしい」と題された作で、
” 世にあふれる漫画本も、トレンディなドラマも、そこらじゅうで流れてる歌も、友情はいいぞと教えてくれているのだから。
そうはいわれても、思い当たる友だちがいない。”(p154)
との前段を受けての
” 贈与の受取人は、その存在自体が贈与の差出人に生命力を与える。”(p164)
&
“「自分が返せる自信のない量の愛を、むやみに受け取ってはいけない」という呪いに。
人に優しくされた。優しくされたら、返さなくちゃダメだ。だけど、ひとりひとりに同じ量を返すには、時間も労力もいる。5人までなら返せるけど、20人、30人に優しくされたら。物理的にとても返せない。”(p163)
といった見方、指摘から
” 贈与は、受け取ることに意味がある。受け取ったわたしにしか果たせない使命があることも、この本は教えてくれた。
贈与は、もらった人に直接返さない方がよい。なぜなら交換になってしまうから。だけど、この世界は贈与でできている。断ち切ってはいけない。じゃあどうすればいいのか。
またわたしが、別の人に贈与をするのだ。好きなときに、好きなだけ。愛と知性を存分にはたらかせて。”(p166)
と出会った『世界は贈与でできている』(=上掲引用の「この本」)からの学びをもとに展開されている着地に腹落ちさせられ、その他、
” 「くるかわからん非常事態のために置いとくより、いますぐ399万円分、家族が思いっきり楽しめる方がええ!いままで我慢してきてんから!お金はまたためる!」”(p26)
という有り金はたいてボルボV40を購入した話し(=そこには深い訳が)に、
” 衝撃を受けた。スマホが割れていることで、恥ずかしいと思えるほど奥ゆかしい人がこの世にいるのか。”(p143)
という受け止めから派生していったその後に・・
誰しも起こりそうな日常に、抱きそうな感覚が、岸田奈美さんのフィルターを通じて文章表現される感じが心地良く、
帯に踊る
” この本を読んで後悔する人はいない。”
矢野顕子さんの推薦文も誇張ではないであろうと、
多くの人が読んで楽しめる赤裸々、等身大のエッセイ集であるように感じ、また次作が今から楽しみです。