岸田奈美さんの『国道沿いで、だいじょうぶ100回』を読了。
先月(2024年6月)青山ブックセンターで開催されたサイン会に参加して入手していた著書。
通算5冊目となる岸田奈美さん本、本書は
” この3年間で「だいじょうぶ」が、口ぐせになってしまった。
昔はもっと、奥の手というか、大魔法を唱えるというか、ともかくそれぐらい気力をふりしぼって「だいじょうぶ」と言っていたはずで。
・・中略・・
この本に載っている話はぜんぶ、返事のいらない手紙みたいなもんである。わたしがわたしへ、思いつきで、行き当たりばったりで、軽々しくぶん投げてきた「だいじょうぶ」が積み重なり、一冊になった。”(p5/9)
という背景を持つエッセイ集で、てっきり直近のエピソードがまとめられたものかと思いきや然に非ず。
” 中学生のとき、大好きだった彼氏にフラれました。
「奈美の弟の障害が、将来もし、子どもに遺伝したら、育てていく自信がない」
それが理由でした。”(p106)
とズシンとくる過去を絡め、オンラインで発せられた心ないひと言の発言主へ寄せた一文あれば
” 桃が食べたい。
そうだ、ふるさと納税しよう。
WEBサイトを開き、がめつさを「出してけー、出してけー、ホラそこの1年生も声出してけー」って勢いで出して、返礼品の桃をじっくり見比べた。
桃が5キロもらえる納税先を選んだ。欲張った。
・・中略・・
後日、注文確認書が届いた。
「桃、80キロ」
二度見した。80・・・キロ・・・?”(p126)
と岸田奈美さんらしい?!クスッとさせられる尽きないドタバタに、一度ハマったら高確率で魅了されるであろう世界観健在 ^0^/
そのような中、軸となるのは(例えば)弟 良太さんを取り囲む
” だいじょうぶ。
良太がピヤーッと走り出して、良太の目にしか映らない美しい世界を、良太が夢中で追いかけられるのは、あなたが命を守ってくれたおかげや。良太はきっと、大切ななにかを追っかけてだけやって、信じてるあなたはすごいんや。”(p72)
岸田家の絆が、しっかり文章で表現されていること。
膝を突きたくなるような現実からも、本質を学び取り、しっかり希望を見出す結末に(ときにオチに・・)、著書を重ねるほど読者の輪が拡大していることがよく実感出来ました。