書店、SNS上などで本書が話題になっていたことは承知していた折、東武百貨店池袋店内の旭屋書店池袋店で
見覚えのあったTweet⬇︎
の現物を見つけコレクター魂を刺激され・・購入していた経緯。
悲劇も人に語って笑わせれば
本書は、
” 父は他界、弟はダウン症、母は車いすユーザー、からのコロナ禍に生死をさまよう大手術間に祖父の葬式が挟まってついには、祖母がタイムスリップ ”
ー 残された長女(作家)にすべてのタスクは託された “
更に
” どんだけがんばって、心穏やかに接しても、ばあちゃんはすぐに忘れてしまうし。弟は言葉のすべてをわかってくれるわけじゃないし。母には心配かけられないし。”(p8)
という境遇にある岸田家長女の岸田奈美さんの
” かのチャップリンは、「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ」と言った。
わたしことナミップリンは、「人生は、ひとりで抱え込めば悲劇だが、人に語って笑わせれば喜劇だ」と言いたい。”(p9)
というスタンスからまとめられた37日間(2021/3/10〜4/15)の日記。
” 実はあのとき、運ばれてきたもう1人の急患は、母と似た症状だった。しかし、この難しい手術が得意な執刀医は、ここに1人しかいない。
どちらを先に手術するか。そういう話が行われていたそうだ。
ちなみに、どの病院のどの先生と話しても、母はその先生が手術しなければ救えなかったはずとのことなので、母が先に選ばれなかったら、死んでいた。”(p30)
に、
” 弟は障害者だ。ダウン症で、知的障害。
でも、彼の特性は、成長がとてもとても、ゆっくりであること。言葉をうまく話せず、コミュニケーションが難しいこと。
環境の変化や曖昧な空気の理解が、苦手なこと。
それは障害なんだろうか。”(p103)
という綱渡りな日常に、読み進めるほど愛くるしい弟さんとの交流録など、
一面では重たい現実も、岸田奈美さんの文才に他ならぬ絶妙なタッチで、読み手の頬を緩めさせられる展開の連続 ^^
もうあかんわ、から伝わってきた温かさ
当初は介護など、距離を置いてきたトピックで全318ページと及び腰なところがありましたが、
最後(日)、
” 今日で「もうあかんわ日記」は終わりますが、もうあかん日々が終わることはないので、これからも、もうあかんわと嘆きながら笑っていこうと思います。”(p318)
と終わりを告げられると名残惜しさを感じられるまでに・・
誰しも望まざることながら(少なからずの人々に)向き合わざるを得ない現実を
岸田奈美さんの発想の転換、巧みな文章表現に多くの人が共感されてのヒットであろうと、2冊セットがきっかけで手元に引き寄せることの出来た良き巡り合わせでありました〜