先の三連休の中日、作家 岸田奈美さんの『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』を読了。
先々週に読了した ↓
『もうあかんわ日記』(2021年5月)と2冊セットで購入していた、もう一冊。なお、出版されたのは2020年9月で本書が先。
日常の見事なエンターテインメント化
『もうあかんわ日記』を読んでいた時に実感していたことですが、(悲劇を含む)日常を読み物に昇華させたり、エンターティンメント化したりすることが見事=達人の領域で、
特に印象的であったのは、
” 甲子園球場の売り子のバイトを、大学生時代に。
・・中略・・
そんで売り子に応募して。トントン拍子で受かって。「いやー、すこぶる順調。生まれもってのスターだわこれは」くらいにね、思ってた。堂々と。何の疑いもなく。
初出勤日に、ホットコーヒーの箱をもたされるまでは。”(p129)
に始まるジェットコースター的な甲子園球場でのアルバイト生活に、因みに結び部分 ↓
” そんなこんなで、わたしは歴代で最も多くのコーヒーを売った女になった。”(p136)
!
更に、大学生時代の出逢いから起業メンバーとして参画することになった株式会社ミライロでの
” なんでそんなポンコツになっていたかというと、すべて切羽つまった状態のままみようみまねでこなしてきたからだ。
入社して3年目に広報という役割を担ったが、とりあえずネットに落ちているプレスリリースのデータを見て、それっぽいものをつくってメディアに配ったりしていた。
・・中略・・
ある日「テレビ番組の『ガイアの夜明け』に出演させてもらおう」と思いついたときも、体当たりだった。
・・中略・・
自分が番組の構成作家になったつもりで、企画書のようなものを完成させた。
その企画書のようなものをメールで受けとった番組のディレクターから、連絡があった。
「この企画書、このまま会議に出せますよ。助かりました」”(p152-153)
圧巻の戦略、実行力から『ガイヤの夜明け』出演を果たした秘話に、
本書のトピックの中心である
” 家族だから愛したのではない。愛したのが家族だったのだ。東京駅で幡野さんに撮ってもらった、家族の笑顔の写真が、新しい意味をもった。
わたしは家族を信じることを、自分で選んでいいのだ。逆もまた同じで、家族はわたしを信じることを、選んでくれたのだ。
おそるおそる、父と母と弟と過ごした日々を楽しく書いてみたら、たくさんの人に読んでもらえた。
わたしの後ろめたさは、言葉にしてみれば、それはわたしにしかない個性となった。
わたしのエージェントをしてくれる編集者の佐渡島庸平さんは「岸田さんはたくさん傷ついてたくさん苦しんできたから、こんなにおもしろい文章が書けるんだね」といってくれた。
わたしのことも、わたしが選んだ家族のことも、認めてもらえたようで救われた思いがした。”(p199-200)
岸田家の皆さん(=車いすユーザーのお母さまと知的障害をお持ちの弟さん&今は亡きお父さま)との日常&非日常もろもろ、
心をじんわりじゅわ〜っと温められるようなお話し点在の一冊で抱き合わせ購入ながら納得の読み応え ^^
新たに岸田奈美さんの新著↑が出版されたようで、またこちらも楽しみになってきました〜