読み進めている間の中間記を先日アップロードした、KISS の Gene Simmons:ジーン・シモンズが上梓したビジネス書
『KISS ジーン・シモンズのミー・インク』を読了.-
中間記では、ジーン・シモンズが自分自身を軸に書いた「ME」について、まとめましたが、
今回は読者へ向けた「YOU」からの抜粋。
多岐に渡り、細かく説明された起業家論
結論的なことを書くと「ME」で書かれてあったことの方がダイレクトに私に響いてきたように感じていますが、
それは章の中ごろから
” 資産総額が買いたい家の4倍になるまで手を出すな。”(59%、百分率は電子書籍のページ数、以下同様)
” 率直に言えば、英語を話す能力と成功は関係している。 ・・中略・・
そして、訛りのない英語を話す。・・中略・・ 訛りが強かったりしたら、後で印象に残るのはきみの訛りだけだ。きみが話す内容ではない。”(73%)
といった仔細に及ぶ内容や、起業家を目指す女性に宛てた章(第21章)に、アメリカ国内に限定される助言など
アドヴァイス項目が多岐に渡る点は冗長にも感じられ、メッセージの発せられるテンポは「ME」の方が私には合っていましたが、
こういった事が気になる私のような方は本を通しで読もうとせず、興味ある章を選んで読み進めていくと、満足感が違ってくるように思います。
Gene Simmons Shares His Business Advice(本書のPR動画)
起業家たるマインドセット
それでも「ME」から続く「YOU」の前半部分では
” メリアム・ウェブスター辞書はアントレプレナーを「リスクを引き受けて企業などを組織し、運営する者」と定義している。
つまりアントレプレナーとは自分で考え、自分ですべてを引き受けて行動する人間のことを指す。
このことを覚えておくのは大切だ。
きみはきみ自身に対して全責任を負っている。すべてきみ自身にかかっているのだ。
学校を卒業した後でも自分自身を教育しなければならない。自分よりも成功している人間と友達になるのも自分の責任で行うべきだ。”(42%)
” 成功への道はそれぞれ全く異なるので、自分自身で見つけるしかないということだ。前にも言ったように、それが起業家の本質だ。
きみが自分でルールを決め、自分で道を作るのだ。自分自身を教育し、成功に必要な知識、技能を身につけ、いつでもビジネスの現場に飛び出して戦えるように鍛えていかなければならない。”(43%)
” 「1万時間の法則」について書かれた本がある。どんな分野でも成功するためには1万時間の経験を重ねることが必要だという法則だ。
どんな分野でもいいが、何かで身を立てようと思うのなら、少なくともそのぐらいの時間を使わなければものにならない。
ビートルズは60年代の無名時代にドイツのクラブで1万時間くらい演奏した。
ビル・ゲイツは1968年に高校のコンピュータを使ってやはり1万時間くらいプログラミングをして過ごした。
いかに愛していようと、ガールフレンドやボーイフレンド、妻、夫と自分のキャリアのどちらにも同じだけの時間を使うことはできない。
でかく、かつ早く成功したいなら、まず自分のために時間を使え。それ以外の人間は後回しだ。 ・・中略・・
この時点では自己中心的であれ。まずは自分自身にコミットしろ。 ・・中略・・
他人のために奉仕するのは成功してからだ。”(43%)
など、スキルを身につける前に大切なマインドセットが本章で力説されています。
リスクは自分自身の考え方なり
また、読者の背中を押す、下記の興味深い指摘もあり・・
” 起業家の道に飛び込んでも失うものはほとんどない。
最悪、負債が払えなくなっても、ちゃんとした弁護士を雇って破産法7章(破産)か11章(再建型倒産処理手続き)を申請すればよい。
そうすれば負債は帳消しになり、しばらくすればまたゼロから再出発できる。
もちろん倫理的な人間であれば、たとえ法的義務はなくても、成功したなら借金を返すべきだ。”(43%)
と、直接的にはアメリカ国内の起業家向けとなりますが、日本でも一度挫けた起業家が再起してくる例は数多ありますので、
同様の法制度が敷かれているとみられ、日本の読者に宛てたメッセージでもあるでしょう。
ジーン・シモンズも失敗を重ねている
この本を書いているジーン・シモンズ自身、
” 私は失敗した回数が成功した回数より多いだけでない。毎日失敗している。もう一度読んでほしい。「毎日」だ。
私が手にしたどの成功も、何かしらの理由でうまくいかなかった数々の挑戦の上に成り立っている。
成功に関することわざ「落馬しても、すぐにまた馬に乗ること」や決まり文句「最初の挑戦は失敗する」の言葉の意味を、初めて聞いたかのように、あらためて考え直してみることだ。
決まり文句の裏には理由がある。失敗がなければ、ビジネスパーソンは生き残ることができない。
もし失敗することがきみのプロダクティビティーを削ぐようなら、そもそも起業家になるなんてことを考えるべきではないだろう。”(89%)
VAN HALENと早過ぎた別れ
その失敗に関して、私的に興味深かったのは VAN HALEN に関する内容で・・
” シモンズ・レコードは、1980年代後半、RCAレコード社の社長、ボブ・ブジアックとRCAインターナショナルの社長、ハインズ・ヘンとの出会いから始まった。
その時、私の直感がもたらした成功をもう一度再現できると全員が信じて疑わなかった。
なんのことかというと、1987年(註:1978年以前の誤植とみられます)に私はヴァン・ヘイレンを見いだした。
誰も私のことを信用しなかったが、そんなことには構わず、私のプロダクションであるマン・オブ・サウザンド・フェイシズとヴァン・ヘイレンは契約した。
彼らをニューヨークに送って、彼らはそこで24トラックテープに15曲入ったデモテープを録音した。 ・・中略・・
デモテープにはヴァン・ヘイレンの最初のアルバムに収録された曲やそれ以降のアルバムの曲も入っていた。
当時のマネージャーだったビル・オーコインはヴァン・ヘイレンが成功するとは思っていなかった。私のバンドのメンバーも同じ考えだった。
それでも私はヴァン・ヘイレンをサポートしたかった。彼らにわれわれのすべてのコンサートのオープニングを務めさせたかった。
そうすれば、彼らを瞬く間に広めることができただろうし、KISSは別バンドからの収入を得られるはずだった。
少なくとも私はそう考えていた。しかし、アイデアは脆い。
自分と同じようにそのアイデアを信じる人がいなければ、アイデアは簡単に潰れる。そして実際、そのアイデアは消えてしまった。
私はヴァン・ヘイレンを手放した。彼らとの契約書を破った。倫理的な観点からそうしなければならないような気持ちだった。
6ヵ月も立たないうちに、ヴァン・ヘイレンはワーナー・ブラザーズレコードと契約し、後はきみも知っているかもしれないが、彼らは大成功した。”(89%)
VAN HALENの成功したスケールを考えれば、ジーン・シモンズほど成功していなければ、生涯後悔に苛まれるような失敗ですが、
失敗はつきものとして考え、アイデアが湧いたり直感が閃いたら、結果で判断出来るところまで持っていくとの教訓ですね。
ロックの世界から垣間見る起業
と、長めの読了記となりましたが、書店に並んでいる一般的なビジネス書に興味が湧かない方で
KISSが好き、ロック好きといった切り口から本書を手に取って、起業家の心得なり、自分自身ならずとも人それぞれが本来持っているあろう可能性を
ジーン・シモンズらしいストレートな語り口から気付かせてくれる一冊と思います。
「なんか違う」「こんなはずじゃなかった」といった具合、悶々とした日々を過ごされている方などには特に効き目がものと。