ビートたけし(北野武)さんが、
” 芸人の俺に、「この時代への弔辞」を読ませようと企んだ出版社があって、しかも、それがあの講談社だった。
俺は面白いと思った。生涯、読むつもりなかった弔辞を、俺がここで読んだらどうなるか。”(p19)
昨年(2020年)末、「うわっ、出遅れた、、」と思ったところから
歩いてサイン本販売店を探し出し、入手していた一冊。
出生から近未来まで
本書は、
第1章 あのころのテレビ
第2章 人間ってやつは
第3章 お笑いの哲学
第4章 さよなら古い世界
と章立てされたもと、
冒頭、ペンキ屋として戦中従事されたお父様の
” ベニヤ製の偽の戦闘機をザーッと何十機も作って、それにペンキを塗って、日本にはまだまだ飛行機があるぞ、ってところを日本に爆撃にくるB-29に見せつけて勘違いさせる、わざと爆撃させて無駄玉を使わせようという、まるでトンチンカンな仕事だったのです。
結局、爆弾は一発も落ちませんでした。
空から見てもニセモノだとわかってしまうぐらいデキが悪かったのでしょう。はなから敵にはバレていました。
この時に徴兵された大工やペンキ屋など、どうしようもない職人連中は、「バカヤロウ、バレてるじゃねえか」と、上官から全員、往復ビンタをくらったそうです。
しかし、爆弾が落ちなかったから父ちゃんは無事だったと言えるわけで、親父の職人技術の未熟さと、大工へのへっぽこ仕事が、私の誕生のきっかけになった。
まずは、そのことを親父に深く感謝したいと思います。”(p3-4)
という、ビートたけしさんの出生にまつわるエピソードから、『オレたちひょうきん族』の頃から
” 「最近の芸人はつまらなくなった」とか言うけど、そうじゃなくて、きわどいネタを話すのを許してくれるスポンサーがないってことなんだ。”(p67)
という当世のTV事情の変遷に、
” 芸人にとって最高の武器は「最高の常識人であること」だと思っている。
芸人は、相手の社会的な地位や肩書きはもちろん、どんな場所でも、どんな状態でも確信犯で「嘘」の会話ができないといけないからだ。”(p118)
という芸人論に、ひいては
” 0101の二進法という手段でもって、人間はデジタル、コンピュータ、ITの世界を生み出したわけだけど、人間の脳の機能を二進法のデジタルに直したところでせいぜい4パーセント、1割もわからないっていうのが現状のところで、人工知能なんていうけど、実際には脳のことなんて何もわかってないに等しい。”(p170)
と強みを発揮する理数系分野を足場にした近未来像に至るまで、幅広にビートたけしさんらしく忖度なしに斬りまくられています ^^
深いことが分かりやすく
ビートたけしさん本は、続々と書店に新刊が並ぶペースに追いつけず、本書は⬇︎以来
ほぼ2年ぶりという時間軸でしたが、
簡潔に深い(と感じさせられる)文、見解が続き、「心、動かされるなぁ」と。
すきっと腹落ちさせられる内容に、新たな視座を与えられた思いに、
書店でレジに駆け込んだ際、「この本、1,000円でお釣りがくるのか」と、ギャップを感じたことを覚えていますが、
廉価でさまざま納得させられ、また考えさせてくれる著書でした〜