ノンフィクション作家 清武英利さんの『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの」を読了。
先月(2018年11月)開催された清武英利さん登壇イベント時↙️
ちらっと本書に言及した部分から興味を持ち購入していたもの。
社会を揺るがした一大事件のリバースアングル
描かれているのは・・
” < 諸外国との国の損得を駆け引きする外交には、スパイ工作や情報収集はつきものだが、そのために外務省には、年間50億円を超える機密費が事実上ノーチェックで認められている。
が、その聖域をいいことに、幹部たちが勝手に機密名目で遊興費に使ったり、「省内信用金庫」代わりにしていたらどうなるか。
果たせるかな、エリート高官に<機密費2億円着服疑惑>が浮上し、外務省は機密の内部調査に乗り出した > “(p96)
と、実際は2億に止まらない詐欺事件となり、更には事件解明後、担当捜査官に
” 「あれはやっぱり私の考え違いで、松尾の事件を何とか成功させようと小っちゃい気持ちを持っちゃったから、外務省の本当の幹部にまで伸ばせなかった。
外務省の局長クラスの捜査をしたことがばれたら、松尾事件の被害者である官邸や外務省が揺れてしまうから手を付けなかった。本当は松尾一人やるよりも外務省の高官をやりたかった。」”(p332)
と言わしめた、空前規模の公金搾取事件の解明に当たった無名の刑事たちの物語。
最初は、実際の事件をもとに小説仕立てに書き上げられているのかと思いきや、
文中、歴代総理の名に、鈴木宗男、佐藤優といった固有名詞が次々と登場し、
「あとがき」で清武英利さんは
” ことわるまでもないことだが、ありのままを書いたために、重い口を開いてくれた関係者が不当な批判を受けることを恐れるが、・・中略・・
登場する捜査員や告発者、容疑者、官邸や外務省の官僚たちの名前は、現職刑事一人を除いてすべて実名である。”(p364)
と記されており、リアリズムにこだわられた一冊。
石つぶてを厭わぬ熱き男たちの生きざま
当初は買ったは良いが、全363ページの厚みに圧倒されていましたが、
読み始め早々にストーリーに惹き込まれていき、事件後の暗澹たる現実(問題は、石つぶての後輩たちの成績が上がらないことである/p365)もまたリアルなのでしょうが・・
何より「あとがき」を締めくくる
” 私は、巨大な組織の「餌付け」を拒んで生きる人々を、社会の片隅から見つけ出すことを仕事にしている “(p366)
清武英利さんの一文に見出された人たち(刑事たち)の人間ドラマが鮮烈な読後感を与えてくれる長編です。