元 通商産業省(現・経済産業省)官僚で、現在は「改革はするが、戦争をしない」を基本理念に提唱されているフォーラム4を率いておられる
古賀茂明さんの新刊『日本中枢の狂謀』を読了。
先日アップロードした「読み始め」↓は
第三章まででしたが、以降、
第四章 日本人だから殺される時代
第五章 日本沈没の戦犯たち
第六章 蘇った原発マフィア
終 章 東京都知事選挙と民進党の全内幕
それぞれ「よく調べられているなぁ」と、裏付けなどとともに重たい現実を突きつけられました。
日本の現状を招いた分岐点
その中で、特に印象的であったのは、日本の現状を紐解いた
” K氏がまとめた三つの大罪の他に、もう一つ、自民党には大きな罪がある、と私は考えている。「日本を成長できない国にした」ことである。
先述したとおり、日本にはまだまだ成長の可能性がある。人口が減少するなかでの成長だから、かつてのような高成長は望むべくもないが、
少なくとも、現在のようなプラス成長とマイナス成長を繰り返すような停滞経済から脱却することは可能なはずだ。
しかし、自民党はそれができない経済を作ってしまった。私は、これを加えて、「自民党四つの大罪」と呼んでいる。
自民党は、成長のための必要な真の「改革」ができないので、経済成長はできない。そのため、慢性的に不況感が社会に蔓延し、絶えず経済政策が求められる。
そして、毎年実施される景気対策はマンネリ化したバラマキだけ。財政赤字はほとんど累積し、いまや一〇〇〇兆円を超える規模となった。”(p213)
K氏は小泉進次郎衆議院議員を指すのでのは?と思っていますが、文中に出てくる「三つの大罪」とは・・
日本を借金大国にしたこと、少子高齢化を放置したこと、安全神話を作って福島(原発)の事故を起こしたこと。(p211から抜粋)
古賀茂明さんの指摘するところでは、
” どの国も、先進国になる過程で出生率が下がり、少子化が進む。少子化が進むなかで、それまでと同じ仕組みで企業が活動し、「成長」を続けようとすれば、当然、人手不足が生じる。
欧州先進国では、それにどう対応したかというと、「人が足りないのだから、人は貴重な存在だ。つまり、人件費は高くて当たり前だ」という考え方への転換を試みた。
経済的に豊かになったことで、より個人の尊厳を重視しようと考えるゆとりが、社会に生まれたという面もある。
・・中略・・
日本は、この間どうしてきたかというと、先進国を目指して労働条件を上げるのではなく、途上国と競争するためには人件費を下げてくれと、企業が声を上げた。
これに対応して政府も派遣や請負を使いやすくなる「改革」を進めた。その結果、企業は何とか生き延びたが、非正規社員がどんどん増えた。
・・中略・・
先進国にふさわしい、個人の尊厳が尊重される、つまり「人件費は高い」ことを前提に企業社会を作り直す。
いい換えれば、それに耐えられない企業は社会的な存在意義を認められず、淘汰されても仕方ない。
そうした考え方への転換が、いま最も必要とされることなのだ。”(p231-232)
民間の側からみると、
” 働き方改革実現のためには、企業の経営戦略を、労働コストが高くても十分儲かる事業に転換することが不可欠である。
しかし、日本の経営者にはそんな能力も覚悟もないようだ。
やはり、彼らにお伺いを立てるのではなく、世界の常識となっている規制を、国が率先して導入するしかないだろう。”(p236)
と言及。
” 社会的な存在意義を認められず、淘汰されても仕方ない。”
の結論は、果たして社会的な存在意義を満たした企業だけで十分な雇用が創出されるのかについて疑問を感じましたが、
問題提起としては興味深く、さまざま考えを巡らされた箇所でした。
国民に選択肢が与えられない政治状況
終章では民進党についても、さまざまな矛盾にジレンマが指摘されていますが、
これも大いに関心を引かれるところで、いくら自由民主党が国民の納得を得られなくなる事態を招いても、
国民に選択肢が示されていない現状に、野党第一党の体たらくぶりが、その内情に光を奪われた思いでした。
415ページに及ぶ読後感の正体
と、七章+プロローグ&エピローグで、計415ページ。
冒頭の文で「重たい現実を突きつけられました」という表現を用いましたが、
考えるべきポイントに、報道されない内幕に、読み手の立場、考えによって、すべてとは行かないまでも
「不都合な真実」の重量感は、どんよりとした後味を残されました。