作家・演出家 鴻上尚史さんの『「空気」を読んでも従わない 生き苦しさからラクになる』を読了。
本書を開いたところの「はじめに」で、
” この本は、あなたの生き苦しさのヒミツをあばき、楽になるための方法を書いたものです。”(p iv)
と定義されており、本編で論旨の骨格を成すのは
” 「世間」と「社会」という二つの言葉を理解すると、あなたの生き苦しさのヒミツがよく分かるようになるのです。
・・中略・・
「世間」というのは、あなたと、現在または将来、関係のある人達のことです。
具体的には、学校のクラスメイトや塾で出会う友達、地域のサークルの人や親しい近所の人達が、あなたにとって「世間」です。
「世間」の反対語は、「社会」です。
「社会」というのは、あなたと、現在または将来、なんの関係もない人達のことです。
例えば、道ですれ違った人とか、電車で隣に座っている人とか、初めていくコンビニのバイトの人、隣町の学校の生徒などです。
日本は「世間」と「社会」という、二つの世界によって成り立っているのです。”(p14)
と、「世間」と「社会」について理解することで、主に生き苦しさから解放されていくプロセスについて説かれています。
弱い世間のススメ
その中でも最も興味深かったのは、
“「たったひとつの『世間』」とぶつかったり、追い出されたりして、生き苦しくなることを避ける方法は二つあります。
ひとつは、同時に他の弱い「世間」に所属することです。もうひとつは、「社会話」をできるようになることです。”(p169)
にある弱い「世間」という関わり。
” 猛烈なサラリーマンの人が、定年退職した後、ヌケガラのようになることがあります。生きがいを見つけられず、何もできない人になってしまう例です。
それは、会社が、たったひとつの「世間」だったからです。”(p169)
という例をもとに、
” でも、他に「世間」があれば、気持ちはうんと楽になります。
週1のダンス教室は、おそらく弱い「世間」ですから、ひとつだけだと不十分かもしれません。
彼女は、ダンス教室だけではなく、塾にも週1で通っていて、そこにも弱い「世間」がある、なんて場合は、より彼女は自由になるでしょう。
もし、「世間」が見つからない時は、探します。
なにか習い事を始めてみるのもいいし、塾に通うのもいいでしょう。ネットで募集しているサークルを調べる、なんて手もあるでしょう。
探しながら、その間の淋しさは「社会話」でまぎらわすのです。
図書館に行って、知らない人に「この本、面白かったです」と一言、言うだけでも少しは気が楽になるはずです。
駅でベビーカーを抱えて苦しんでいる女性に「手伝いましょうか?」と言うだけでも、なんだか素敵な気持ちになると思います。
そうやって、「社会」の人と話しながら、所属できる複数の弱い「世間」を探すのです。”(p171-172)
文字にして読んでみると、ごくごく簡単なことですが、日常に無意識的になってしまうと、
なかなか外側に意識は向かわないもの。今、自分がいる環境をすべてと思わず、
日々のちょっとした心がけで、気づいたら陥ってしまいがちな生き苦しさから距離を置けるという考え方には大いに共感できました。
ちょっとした心がけ & 自分らしさへの接近
その他、本の最後半では「スマホの時代に」と、誰もがもはや無意識的に操作している
スマートフォン、SNS、インターネットの一長一短などについても
” SNSに写真や文章をアップするのは、「正義の言葉」でも「人の評価」でもなく、あなたがそれを「好きかどうか」「やりたいかどうか」で判断するのです。”(p183)
☝️などと簡潔に在りようが示されています。
最初から読んでいくと段階を追っての説明となっているので、より鴻上尚史さんの考えを理解でき、実生活での再現性も高まると思います。
構成も一気に読み切れてしまう分量ですが、通読せずとも、目次から興味持った項目を抜き出し、
即試してみることでも、「生きやすさ」を感じることのできる実践の書であるように思います ^^