個人で2冊目となる心屋仁之助さん本『「好きなこと」だけして生きていく。』を読了。
先般の福井旅行に出るタイミングを見計らって購入し、旅行中に読了。
頭の中が旅モードで解放された状態である事を意図して、見事、それに応えてくれる一冊でした。
題名が題名だけに記述が浅いと被害者を生んでしまうし、このようなタイトルで世に問うには著者として覚悟が要るであろうし、
同様の事を綴った類書も多いのではと推量しますが、
本に書かれている事が刺さってきたのは、内容が心屋仁之助さんの実体験に基づいていること、
更に心理カウンセラーという立場で、数多くの人々の心の状態、動きを観察されてきたことにあるのだと思いました。
頑張らないでも価値ある自分に気付く
心屋さんが、頑張っても報われないサラリーマン生活から抜け出し、「頑張らなくても好きなことだけして生きていけるようになった」になったプロセスは・・
” 自分には価値があると思ってみる → 価値があるから頑張らず自然体でいると、成果が上がる → 頑張らなくても報われる → ますます自分には価値があると思うようになる。” (p29)
という連鎖の始まり、「自分には価値がある」と思うようにしたことがポイント。
” 好きなことをして生きるコツは、自分は「実は」すごい人間だと思い切ることです。
そうすれば、すごい自分は好きなことをしていい、と自分を許せるようになります。”(p118)
この辺り、前回読んだ『折れない自信をつくるシンプルな習慣』
の内容とリンクしますが、まず、
” 「自分には価値がある」ということを信じるための第一歩、それは、まずは頑張るのをやめること。
「頑張らない私」でも価値があるのだと実験してみるのです。
でも、「頑張らないと価値がない私」と思い込んでいる人は、なかなかその(頑張らない)チャレンジはできません。
「私は頑張らないと認められない人間」だと思って生きているので、認められない状況や頑張れないときがほんの少しでもあると、
心がものすごく反応して、「ほら、見たことか!」「あぁ、やっぱりね」「私は頑張らないとダメな人間なんだ」とそのことを大きくして、ため込んでいくからです。”(p21-22)
ここに「好きなことだけ」をして生きていけるか否かの大きな分岐点があるようです。
本を手に取って、レジに買うまでに至っている人であれば、多少その事にリアリティを感じていると思いますが、
世の中の大多数が「好きなこと」だけして生きていくことに否定的な反応を示す容易に想像できますから
シンプルではありますが、貫く覚悟が試されます。また、人生に対するマインドセットにも言及されていて
” 「人生は人が思うほど甘くない」のではなく、本当は「人が思うよりずっと甘くて優しい」のです。
大切なのは、それを信じられるかどうかです。”(p30)
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” 人生というのは、基本、上りのエスカレーターだと僕は思っています。(昔は逆だと思っていました)。
そういう流れがつねに僕らの周りに渦を巻いて、その流れに身を任せてじっとしていれば、ちゃんと上まで連れて行ってくれる。
それなのに、なぜか「あかん」と思って、「ラクは、いかん」と思って、わざわざ下りのエスカレータに乗ろうとする人がいるのです。
頑張って、苦労して、一生懸命我慢して、下りのエスカレーターを駆け上がらないと自分の好きなことはできない。
そう思い込んでいるのです。”(p31-32)
と、確かに自分が信じている思い込みに関して、もとを辿っていくと、親から言われたことを無防備に受け容れてたり、
或いは大した根拠がなく、単に横へ習いをしていただけという事に気付かされる方も少なくないのではと思います。
ここで「好きなことだけして生きていく」人たちへ向け、心屋さんからのメッセージがあり
” あなたがもし「ラクな生き方」ではなく、好きなことをして生きていきたいと思うのなら、
「嫌われてもいい」「非難されてもいい」という「他人軸」のハードルを越えないといけない。」” (p77-78)
という事。指摘を受けてみればもっともな事で、他人と違った生き方をしたいのに、
他人の反応や居心地の良さを求めていたいのであれば、変わることは実現できない。但し、
住む世界が変われば同じ価値観の人たちとの出会いが待っているわけで、そこに至る移行期間に耐えられるか否かという事だと思います。
” みんな「好きなことをして生きていきたい」と思うのに、それができないのは、
目の前の「嫌われる」という一番大きな問題が乗り越えられないからです。” (p79)
「自力」を手放す・・
「好きなこと」だけして生きているのか、そうでいないかの面白い例えが紹介されていて・・
” 飛行機のファーストクラスに乗れる人は「他力」を使える人です。
なぜかというとファーストクラスの航空運賃はものすごく高額なので、自力で頑張ったくらいでは、ぽんと出せる金額ではありません。
でもビジネスクラスの運賃ぐらいなら「自力」で頑張れば、何とか乗れます。
ビジネスクラスにいる人たちの多くは「自力」で頑張っている人たちです。
頑張っている人たちなので、飛行機を待つラウンジの中でも多くの人が仕事をしていたと言います。パソコンを開いたり、書類に目を通したり。
でもファーストクラスにいる人たちは違います。隣に座った人たちとにこやかに会話をし、ワインや食事を楽しみ、ゆったり新聞を読む。
両者は服装も違います。ビジネスクラスの人たちは圧倒的にきちんとしたスーツ姿が多く、ファーストクラスの人たちはカジュアルで楽なかっこうが多いそうです。
頑張れば、何とかビジネスクラスまでは行ける気がします。でも自力だけではファーストクラスに行けません。
自力で頑張っている人は、自力で頑張るのをやめると、ビジネスクラスもとたんに行けなくなる。
ファーストクラスの人たちは自力で頑張らない人たちです。頑張らずに、「他力」を使っているのです。人を信用しているのです。”(p46-47)
という対比。心屋さんによると、このような本が出版される背景には、下記の現実が横たわっている。
” 自分の可能性を閉じるっていうのは、たとえば、消防用の極太ホースを想像してみてください。
本来の、僕たちの可能性やパワーっていうのは、あそこに水がドカンと流れて、何十メートルも先まで大量に水を飛ばせるぐらいのすごいものなのです。
で、自分の可能性を閉じている人は、そのホースを、体中を使って抑え込んで、抑え込んで、
そこにほとんどのパワーを使い果したのち、ストローのような口から水を出して、目の前の植木にチョロチョロと水をやろうとしているようなものなのです。
そして、そもそも、自分がそれだけのパワーを持っていることを知っているからこそ、そのパワーを全開にすると、
目の前の植木は木端微塵に砕け散るぐらいの力があると知っているからこそ、全力でセーブしているのです。
それが「好きなことをしていない」という状況です。
そして、それをすると、たしかに目の前の植木は壊さないのですが、遠くであなたのことを待っているたくさんの人にも届かないのです。
こっちのほうが罪です。
人が「好きなこと」をして「楽しむ」ことは、そのぐらいのパワーがあるということ、
そして、それを抑え込むことを「我慢」と言います。これも、同じくらいのパワーで抑え込むからとても疲れる。”
僕(心屋仁之助)は、そのホースを、手放して、抑え込まず、コントロールすることをやめたのです。
そしたら、もちろん、離れていく人もいたし、傷ついたという人もいた。
でも、それ以上に、素晴らしい人と出来事に今は囲まれています。その勇気、覚悟、決心をするかというだけの話です。”(p215-216)
今を「受け容れる」決心か、「変える」覚悟か
といった内容が実例などをもとに200ページ強。心屋さんのご経験から
“「頭ではわかっているけどできないです」「どこにでも書いてある方法ですよね、わかっています」「でも現実や行動は変わらないんです」と言われることもあります。” (p217)
と、読者の心情を推量、対応を予測していますが、心屋さんは
” この本を読んで、みなさんに望むことは、ただ「ここに書いてあることを信じてみて」ということ。
そして「勇気」を出して、勇気を出す「決心」をして、大損する「覚悟」をして、今までと「逆のこと」にチャレンジしてみてください、ということです。
今までと逆のことをすると、現実も逆になるのです。”(p218)
というメッセージで本を締め括っています。
頑張りが報われていないと感じられている方々であったり、現状の我が身を振り返ってみて「なんか思っていたのと違う」などと思われている方々にオススメの一冊です。